著者
武笠 桃子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.125-142, 2017-09

哲学と音楽にはいかなるつながりがあるのか。哲学は、「理性」の学問であり、「音楽」は音による芸術である。音楽は、聴覚器官によって、つまり、人間の感性によって知覚される。西洋哲学の伝統においては、理性を感性よりも上級とみなす理性主義的傾向があったため、感性的な音楽について積極的な評価はなされてこなかった。ところが、19世紀になって、ドイツ観念論の哲学者の一人であるA.ショーペンハウアーは、音楽を積極的に評価し、哲学と音楽の間にきわめて深い連関を示唆した。確かに、ドイツ観念論を定めたI.カントはあまり音楽を評価しなかったが、それにもかかわらず、ショーペンハウアーは『意志と表象としての世界』の中で、音楽を意志の客観化として高く評価した。ここでは、彼がなぜ、カント哲学の継承者でありながら、音楽を評価するに至ったかを綿密に研究することが、本論の重要な目的である。本論では、哲学と音楽について、特にI.カントとA.ショーペンハウアーの音楽論を考察する。

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