- 著者
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篠原 由利子
- 出版者
- 佛教大学社会福祉学部
- 雑誌
- 社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
- 巻号頁・発行日
- no.15, pp.45-59, 2019-03-01
日本での精神疾患の治療は非自発的入院である医療保護入院から開始されることが多い。入院を望まない大多数の患者が民間単科精神科病院の閉鎖的な空間で入院期間を過ごすことになる。これら民間精神科病院では、いまだに医療法の特例許可により一般科より少ない基準の職員配置でよいとされている。ICFの定着、障害者の自立や完全な社会参加、差別禁止法など障害者の人権に関する国際的な動きが活発化しているなか、わが国で特に際立つのが非自発的入院の多さと精神科医療機関の閉鎖性である。このような環境の中では人権侵害が起きやすく、また現に起こってきた負の歴史がある。密室性や閉鎖性をはらむ精神科医療の人権侵害を監視し、適正な医療の提供を審査する機関が都道府県に設置されている精神医療審査会である。昭和63年の設置以来、時々の精神科医療の傾向と施策、あるいは人権意識の変化の影響を受けつつ幾度かの改正がなされたが、最近では機能不全をきたしているとの批判も少なくない。ここでは、これまでの改正内容をふり返りつつ、直近の平成25年の法改正以降もなお解決されていない人権擁護上の問題を明確にし、精神医療審査会が本来果たすべき人権擁護機関としての機能について論じていく。精神障害者の人権精神医療審査会医療保護入院