著者
上垣 豊
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.p766-795, 1987-09

個人情報保護のため削除部分あり過去復古的で、前時代的と思われがちな正統王朝派であるが、七月王政期には近代社会への適合を試みる努力がかなり精力的に行なわれていたのである。とくに、自由を擁護し、選挙権の拡大を求め、ナシオンへの奉仕を公言する潮流が存在したことは注目すべきである。しかし従来フランスの研究者は、こうした主張をデマゴギーとして片付け、その政治思想の分析を怠ってきた。最近になってシャンギーとリアルの二人の研究者が正統主義のより近代的な像をうちだし、通説の修正を迫っているが、逆に彼らの論では正統王朝派の反革命性が不鮮明になっている。本稿の諜題は、正統王朝派内の革新的潮流を代表する、自由正統王朝派のナシオン観と、選挙改革案の分析を通じ、彼らの近代性は、反革命プランの近代化―ナショナリズムと全体主義的要素―の中に求めるべきことを明らかにすることである。

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"「ファシズムとは、反動と保守主義とを大衆化・平民化しようとする試み」であるなら、民衆の政治参加を視野に収めた自由正統王朝派の構想が、ファシズムを思わせる特徴をもっていたことは不思議ではない" →ブクマ

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