著者
上島 享
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.p514-553, 1992-07

成功は「売位・売官」といわれ、その消極的側面が強調される傾向が強いが、本稿は国家財政の中で成功制という経費調達制度が果たした役割を積極的に評価し、その展開を考察しようとするものである。本稿では、地下官人の成功をとりあげ、国家財政の中でも恒例・臨時の公事に要する経費調達を中心に分析を行った。 成功制という経費調達制度は、一○世紀後半に造営事業の請け負いにおいて出現し、一一世紀後半には用途進納形態をも含み込み、幅広い経費調達が可能となった。一〇世紀後半に再編された国家財政では経費は国宛(諸国に割りあてること) により賄われていたが、一一世紀末の受領統制の弛緩、一二世紀中期の庄園公領制の確立により、国宛は順次、その経費調達機能を低下させた。これに対応し、地下官人の成功が多用されていく。一二世紀中期より、成功での経費調達を目的に臨時除目が行われるようになり、ここに成功制は国家財政の一翼を担うに至るのである。また、衛門・兵衛といった官職が広く社会に浸透する起源は、一二世紀中期の成功制の変化に求められると考える。

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