著者
藤井 崇
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.765-799, 2003-11

近年、ローマ共和政をめぐる議論が盛んである。クリエンテラを基盤としたノビレス貴族が排他的な貴族政を展開したという従来の通説にたいし、一般市民の制度的権利を重視すべきとの見解が提出され、統一的な理解はいまだ形成されていない状況である。本稿は、この問題を考えるために、共和政中期の同時代史料、ギリシア人歴史家ポリュビオスの『歴史』を分析した。議論は、まず、『歴史』第六巻の混合政体論の検討から進められる。これは、「共和政=民主政」論の重要な根拠となるものであるが、考察の結果、混合政体中の民主政的要素の実態は上層のローマ市民であり、混合政体論は一般市民の政治的重要性を示唆するものではないことが明らかとなった。さらに、『歴史』全四〇巻を体系的に考察したうえで、ポリュビオスは前一六〇年代以降のローマ国政を混合政体からの没落と把握していること、そして、その国政変化に一般市民の政治的意義の増大を看取していることを指摘した。そして、以上の分析で明らかになったポリュビオスの認識を軸としながら、『歴史』以外の史料もあわせてローマ国政を具体的に検討し、前一六〇年代以降、一般布民の政治的重要性が国政において顕著になっていること、その政治的重要性は静態的な制度的権利ではなく、徴兵忌避などにみられる直接的な政治的圧力に基づいていることなどを、最終的に結論として提示した。

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編集者: Los viajeros 77
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