- 著者
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向井 佑介
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学文学部内)
- 雑誌
- 史林 (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, no.5, pp.563-602, 2004-09
中国北朝の瓦は五世紀末頃に瓦当文様や製作技法が大きく変化し、それは隋唐期以降の瓦に多大な影響を与えている。本稿は、瓦当文様や製作技法の検討から当該期の変化を年代的に整理するとともに、刻印や箆書きの文字瓦の分析により瓦生産の特質を明らかにすることを目的としたものである。従来、文字瓦に対する研究は記載された文字の意味を探ることに終始してきたが、筆者は文字の記載位置や製作技法の分析を文字内容の検討とあわせておこなうことにより、北朝から隋唐期の文字瓦が一連の系譜として理解しうることを指摘した。品質管理と労働管理の必要性から出現した北朝の文字瓦は、隋唐期になると変質していくが、その出現と展開は瓦当文様や製作技法の変遷と対応するだけでなく、当時の政治的・社会的背景をも反映していることを明らかにした。