著者
菊池 信彦
出版者
史学研究会
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.549-580, 2006-07

フランシスコ・ピ・イ・マルガルは、一九世紀スペインの連邦共和党執行部の一員として連邦理論を唱え、また一八七三年の第一共和制第二代「大統領」として、自ら先頭に立って連邦化を推進した人物でもあった。その理論は、プルードン流の社会契約論とともに歴史認識論によっても支えられている。本稿は、従来の研究では等閑視されてきた連邦主義者以前の彼の活動に焦点を絞り、当時の彼の歴史認識を析出することを目的としている。予備的考察として、まずは当時の国民史家、アラブ学者らの著作を網羅的に検証し、時代の国民史認識の構造を分析している。そして、ピ・イ・マルガルの歴史認識を当時の歴史認識と比較することで、彼の認識構造の独自性とそれが持つ意味とを考察した。その結果、彼はイスラム教徒による侵入と再征服というスペインの過去を、自他の一歴史的差異を保ちながら、ともに「我々の歴史」と考えていたことが明らかとなった。

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"グラナダ王国の歴史とキリスト教国の歴史の、両者の歴史的差異を認めつつ、しかし両方とも含み、さらに含めた後でもそれらの差異は依然として残り続けると考えた。この多元的思考こそが、彼の歴史認識" →論文

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