著者
図師 宣忠
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.268-300, 2007-03

近年、修道院が編纂したカルチュレールに関する研究は隆盛を見せている。それに比して、都市カルチュレールを扱った研究は少ない。本稿は、南フランス都市のトゥールーズを対象として、都市によるカルチュレールの編纂の意味を探っていく。公証人の登場と文書量の増加という一二世紀以来の流れのなかで、都市はいかなる目的でカルチュレールを編纂したのか。また、その編纂作業を担った社会集団の活動は、都布社会においてどのように位置づけられるのか。こうした点の検討から、本稿では以下のような指摘を行なった。都市トゥールーズのカルチュレールは、一二世紀初頭の都市と周辺諸勢力との関係のなかに自らを位置づける手段として作成され、都市アイデンティティを象徴する書冊と看做されていた。これには、一二世紀後半以降の都市における公証人による文書作成の慣行が背景にあり、都市のコンシュルは、公証人が作成した文書の有効性を強調することで、トゥールーズの公証人の文書に特権的な地位を与えていた。こうしたコンシュルの権力と密接に結びついた公証入の存在が、都市カルチュレールの有効性を都市内外に示すことを可能にしていたのである。

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中世盛期トゥールーズにおけるカルチュレールの編纂と都市の法文化 https://t.co/3rD7NniXoV

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