著者
鶴島 博和 櫻木 晋一 亀谷 学 菊池 雄太 城戸 照子 西村 道也 新井 由紀夫 徳橋 曜 安木 新一郎 図師 宣忠 阿部 俊大 西岡 健司 名城 邦夫 山田 雅彦 向井 伸哉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1. 2018年5月20日日本西洋史学会(広島大学)でDr David Roffeを招聘してDomesday Moneyersと題する研究報告、5月24日熊本大学においてThe Domesday Text Projectという講義を行った。2. 9月2日から8日までは、熊本大学と同志社大学においてThe International and symposium workshop on Money and its Circulation in the Pre-Modern Western Eurasian World in 2018を開催した。報告者は地中海世界のイスラーム貨幣に関してはスペインの大学からProf. F. M.atima Escudero, Prof. Alberto Canto, Carolina Domenech Belda 、Prof. W. Schultz、と科研メンバーの亀谷学が、世界のキリスト教世界に関してはイギリスからDr William Day , Dr Adrian Popescuが、スペインからはProf. D.Carvajal de laと Vega Dr Albert Estrada-Riusが、そして科研メンバーの阿部俊大が行った。議論は、多岐にわたり、とくに少額銀貨の流通に関して有意義な知見をえた。スペイン貨幣史研究の指導的研究者である Prof. Alberto Cantoからはこれまで経験したシンポジウムの中で最良のものの一つであるという評価を得ている。これらの報告内容に関しては報告書(2029 for 2018)に収録する予定。3.熊本地震で出土した益城町出土の古銭を地元の協力を得て分析し報告書を出版した。研究を地域に貢献することができた。4.2019年1月23日から2月10日まで鶴島がイタリアでProf. Andrea Saccocci, Prof. Monica Baldassariと研究打ち合わせを行い本年度のシンポジムに関する意見交換を行った。オックスフォード大学でZomiaに関する研究会に招待されて貨幣史から見たイングランドの無統治地域についての報告を行った。3月28日は今年度まとめの研究集会を行い、29日にドイツとバルト海の交易と貨幣についてProf. Michael Northと研究打ち合わせを行った。
著者
服部 良久 青谷 秀紀 朝治 啓三 小林 功 小山 啓子 櫻井 康人 渋谷 聡 図師 宣忠 高田 京比子 田中 俊之 轟木 広太郎 中村 敦子 中堀 博司 西岡 健司 根津 由喜夫 藤井 真生 皆川 卓 山田 雅彦 山辺 規子 渡邊 伸 高田 良太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

23人の研究分担者が国内外の研究協力者と共に、中・近世ヨーロッパのほぼ全域にわたり、帝国、王国、領邦、都市と都市国家、地方(農村)共同体、教会組織における、紛争と紛争解決を重要な局面とするコミュニケーションのプロセスを、そうした領域・組織・政治体の統合・秩序と不可分の、あるいは相互関係にある事象として比較しつつ明らかにした。ここで扱ったコミュニケーションとは、紛争当事者の和解交渉から、君主宮廷や都市空間における儀礼的、象徴的な行為による合意形成やアイデンティティ形成など、様々なメディアを用いたインタラクティヴな行為を包括している。
著者
図師 宣忠
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.268-300, 2007-03

近年、修道院が編纂したカルチュレールに関する研究は隆盛を見せている。それに比して、都市カルチュレールを扱った研究は少ない。本稿は、南フランス都市のトゥールーズを対象として、都市によるカルチュレールの編纂の意味を探っていく。公証人の登場と文書量の増加という一二世紀以来の流れのなかで、都市はいかなる目的でカルチュレールを編纂したのか。また、その編纂作業を担った社会集団の活動は、都布社会においてどのように位置づけられるのか。こうした点の検討から、本稿では以下のような指摘を行なった。都市トゥールーズのカルチュレールは、一二世紀初頭の都市と周辺諸勢力との関係のなかに自らを位置づける手段として作成され、都市アイデンティティを象徴する書冊と看做されていた。これには、一二世紀後半以降の都市における公証人による文書作成の慣行が背景にあり、都市のコンシュルは、公証人が作成した文書の有効性を強調することで、トゥールーズの公証人の文書に特権的な地位を与えていた。こうしたコンシュルの権力と密接に結びついた公証入の存在が、都市カルチュレールの有効性を都市内外に示すことを可能にしていたのである。
著者
図師 宣忠
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.74-109, 2012-01

異端審問の導入とフランス王権による統治の開始という新しい状況に直面する一三世紀の都市トゥールーズにおいて、「異端」はどのように扱われたのか。本稿では、一三世紀前半における異端審問官と都市民の間の「異端」問題をめぐる対立の事例、およびこうした過去の「異端」問題を理由に今度は国王役人によって財産没収の危機にさらされた都市民たちが国王に嘆願をなし、国王フィリップ三世の特許状を引き出したという一三世紀後半の事例を、文書利用という観点から検討していく。その結果、異端審問官が「異端」の追及・断罪のために残した判決記録が、のちに国王役人によって都市民を赦すための「証拠」として用いられていたという興味深い事実が明らかになった。異端審問官は「異端」追及の手段として、一方で王権も被治者の体系的な把捉のために、それぞれに効率的な文書利用を展開していくが、テクストの参照あるいは「証拠」としての記録の利用といった一三世紀における実践的な文書利用のあり方が、王権・異端審問と都市が取り結ぶ関係の一端を照らし出してくれるのである。