- 著者
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桂川 光正
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
- 雑誌
- 史林 (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, no.2, pp.355-380, 2008-03
発足当初の関東州の阿片制度には、容易には理解し難い奇妙な事柄が三点見られる。これを一つ一つ、現地中国人阿片商の動向との関わりに留意しながら考察すると、関東州を台湾産煙膏の独占市場に仕立て上げるのが、この時の特許専売制導入の目的だったこと、しかしその企てが成功しなかった事実が明らかになった。更に、関東州に張り巡らされていた在来の経済的・人的・社会的ネットワークから関東州を切り離し、台湾と繋げることで、日本を頂点としたネットワークを新たに作り上げようとするのが、日本のこの時期の関東州統治の基本方策、ないしはこの時点での日本の帝国形成の基本戦略であったことも明らかとなった。関東都督府はその後、阿片制度の手直しを行なうのだが、それは、日本による関東州統治の進捗ないし安定化のために重要な柱を構築する意味があった。阿片・麻薬問題の歴史的研究は、このように、帝国史研究の一環として大きな意味を持っている。