著者
上野 大輔
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.390-417, 2010-05

本稿の課題は、幕末期長州藩における民衆動員と真宗との関係について究明することである。まず、欧米勢力の来航に対する海防に当たり、人々を国家に服従させ、進んで死に赴かせることを重視した村田清風は、そのために真宗を利用することも試みた。一方、月性『仏法護国論』は、蓮如教学の有効性を重視しつつ、国家への服従としての海防に向け門徒を扇動した。文久年間以降、藩内では諸隊の編制が進展し、僧侶を中心とする隊も結成されたが、中でも真宗僧侶の活動は顕著であり、月性門下の僧侶も主導的な役割を果たした。ここでは、来世での極楽往生と共に、現世での「皇国」への患誠を積極的に志向するという、蓮如教学的構造をとった思想が、活動の一基盤をなした。また、欧米勢力や幕府との戦争を通じて民衆動員が進行する中、真宗僧侶による支配安定化・軍事動員のための活動も展開し、かくして真宗は、藩による民衆動員を促進する役割を果たしたのである。

言及状況

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明治4年8月19日(1871年10月3日)、広如(大谷光沢)が死去。幕末の西本願寺の僧で、長州藩や月性との結びつきが強かった。上野大輔「幕末期長州藩における民衆動員と真宗」(『史林』93-3)曰く、広如が法主の時期に「勤王の立場が明確化され」、朝廷や新政府に献金。 https://t.co/epYE9XctKu
上野大輔「幕末期長州藩における民衆動員と真宗」(『史林』93-3、2010年)によれば、村田清風は海防のために宗教も利用しようと考え、長州藩内の真宗僧侶たちもキリスト教や排仏論への対抗から要請に応じた。月性の門下・大洲鉄然の僧兵隊結成の動きなどを分析。 https://t.co/epYE9WUSSW

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