- 著者
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松尾 充晶
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
- 雑誌
- 史林 (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.98, no.1, pp.3-31, 2015-01
古代日本の地域社会において、神・社がどのような存在であったのか、天平五(七三三) 年に完成した『出雲国風土記』をもとに分析した。水源と観念された山に対する基層的な信仰があり、山の峯にある岩石など自然物が社と呼ばれた一方で、麓に設定された祭祀空間も同様に社と呼ばれた。後者は国家(神祇官) が把握する神社として認定されることにより固定化される傾向が強い。地域社会の中では、そのような国家の神祇制度の対象となる社(官社) 以外にも、様々な祭祀空間が重層的に併存していたのが実態であり、これらを社と呼んで並列的に書き上げたのが『出雲国風土記』に表れた地域的神社統制の特徴であった。こうした社は村落共同体ごとに存在しており、山間部や平野部、海浜部といった地形・生業形態によってその規模・分布密度は異なっていた。