著者
坪井 剛
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.32-68, 2015-01

専修念仏教団の教団としての発展要因について、これまでの鎌倉新仏教論でも、顕密体制論においても、専修念仏側の思想的妥協によるものと位置づけており、その僧侶集団としての形成過程については詳しく考察されてこなかった。これに対して本稿は、鎌倉期を通じた専修念仏教団の展開について、各々の僧侶集団がいかなる契機により形成されることとなったのか、この点を軸として考察したものである。それらは大きく以下の三つのパターンに分けられるものと考えられる。第一に、何らかの外護者を得て拠点寺院を建立するパターン、第二に、延暦寺の別所周縁で僧侶集団を形成するパターン、第三に、祖師信仰の寺院として門流や貴賤の信仰を受けながら僧侶集団を形成するパターンである。各々、経済的側面や法系の安定的継承においては、独自の特色を有しており、鎌倉期を通じて形成されたそれぞれの僧侶集団としての特徴が、南北朝期以降の展開を規定していたものと考えられる。

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