著者
栗原 麻子
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.3-38, 2016-01

一九八○年代以降、古典期アテナイのオイコス(家) をめぐる研究は、父系的な氏族支配からポリスの支配へという発展論的理解を脱し、単婚小家族を基盤とするより小規模な世帯へと焦点を移した。本稿においては、そのような夫婦を中心とする世帯を、ポリス法制上の構成単位とみなしうるかどうかについて、とりわけ「空のオイコス(エレモス・オイコス) 」の概念を中心に検討する。その結果浮かび上がるのは、夫のオイコスに対する妻の権利の希薄さである。アテナイ法制上にオイコスの存在を確認できるとすれば、それは夫婦を中心とする世帯というよりは、直系によって継承される系譜上の存在であった。しかるに民衆法廷での家族をめぐる言説は、とりわけ女性を通じて形成される世帯の親愛を示すエピソードに事欠かない。民衆法廷は、法制上のオイコス概念と実態上の世帯の親愛とのあいだを調整する場であったといえる。

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栗原 麻子-  家族の肖像 : 前四世紀アテナイにおける法制上のオイコスと世帯 (特集 家族) https://t.co/T4Lrh10bfS #CiNii

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