- 著者
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魚津 知克
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
- 雑誌
- 史林 (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.100, no.1, pp.178-211, 2017-01
本論文では、「海を舞台とした人間活動と深い関連をもつ脈絡により、海の近くに築造された古墳」である「海の古墳」を研究することの意義と限界、そして展望を示す。まず、研究の意義として、首長墳の立地論や、海浜部の複合生産型臨海集落との関連、北方・南方の海蝕洞穴塞や海岸墓にも視点が広がることを挙げる。続いて、「規模」「立地」「海岸線と前方部の向きとの関係」という三項目での分類案を提示する。これにより、集団構成員から支配者層に至るまで、地域や時期の傾向を持って築造されたことが明らかとなる。一方、研究の限界も存在している。「海の近く」が曖昧であり、「海を舞台とした人間活動」も切り分けが難しい。それぞれ打開案を示したが、多くの分析検討の余地がある。しかし、古墳時代の生業や生産のあり方や、王権の統治原理や一般の生活論理を知る重要な糸口が、「海の古墳」から見えてくる。古代世界全体へと、研究の展望がひろがる。