- 著者
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清野 陽一
魚津 知克
- 雑誌
- じんもんこん2012論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.2012, no.7, pp.219-224, 2012-11-10
「海のシルクロード」と呼ばれる,太平洋・インド洋沿岸の交易ルートは,古代アジア全体の相互交流に大きな役割を果たしたと考えられる.そのルートを具体的に復原するうえで大きな問題となるのが,マレー半島基部にあるクラ地峡の存在である.本研究では,クラ地峡を陸路で横断した場合と,マラッカ海峡を海路で通過した場合とのそれぞれについて,地理情報システム上での移動コスト計算をおこなった.その結果,特別な理由が無ければ,クラ地峡を通らず海上を通るルートの方が楽に移動できることがわかった.クラ地峡ルートを採用するのは,従来の説の通り,船の座礁や難破,海賊による略奪といった人文的環境が背景にあるに違いない.今後は,海上交通における移動コストをより実態に近い形で算出するためのパラメータを求めることが重要課題である.