著者
山田 信行 ヤマダ ノブユキ Yamada Nobuyuki
出版者
駒澤大学文学部社会学科
雑誌
駒澤社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
no.53, pp.129-153, 2019-10

グローバル化という長期的趨勢の結果、資本主義というシステムは世界の「普遍」を担うものとなった。グローバル化のもとで、様々な社会問題が引き起こされていることを考慮に入れるとき、なぜ資本主義が世界の「普遍」を担うことになったのかをあらためて問い直す必要があろう。本稿は、資本主義の生成に際して、人々が資本主義を選好する原因を解明する作業にほかならない。本稿においては、資本主義形成の重要なメルクマールである「自由な賃労働」という種差的構造の生成に照準を当てることによって、単なる強制や暴力によるだけではない構造の形成のあり方を概念的に把握することを試みる。この作業を通じて、資本主義への構造転換あるいは移行は、移行によって解体されることになる前資本主義的な社会関係が存続していることによって、かえって容易になる可能性があることを指摘したい。加えて、本稿においては、資本主義とは異質な社会関係の将来的帰趨について展望するとともに、そうした社会関係が世界システムから失われた場合に想定される事態についても考察を試みる。この考察は、資本主義以後の社会、すなわちポスト資本主義社会に求められる要件を明らかにし、期待される制度のあり方についても、一定の回答を提示することになる。

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