著者
行實 志都子 ユキザネ シヅコ 八重田 淳 ヤエダ ジュン Yukizane Shizuko Yaeda Jun
出版者
駒澤大学文学部社会学科
雑誌
駒沢社会学研究 : 文学部社会学科研究報告
巻号頁・発行日
no.53, pp.1-16, 2019-10

目的:精神障害者の地域生活支援を行う領域において、ピアサポート活動は約20年前から注目され始めた。精神障害者にとってピアサポートは自分自身を取り戻す「魔法のことば」のように取り扱われ、全国でピアサポート養成が実施された。ピアサポートは、同じ体験をもつ仲間同士の関係性を表す言葉であるが、特に仕事としてピアサポート活動に注目が集まった。よって本研究は、精神障害者当事者会が行うピアサポートを基盤にした電話相談等の活動には職業的妥当性があるかを検証することを目的とした。調査方法:2013年11月に精神障害者の当事者会に所属する12名に対して、フォーカスグループインタビュー調査を実施し内容分析を行った。結果:「人間関係の中での葛藤」、「ピアサポートの活動を実施したことでの気づき」、「ピアサポート活動での悩み」などの9つのカテゴリに整理された。考察:当事者会の電話相談等のピアサポート活動は、職業的妥当性といった観点からは、まだまだ課題が多く仕事して捉えることに無理が生じる。当事者会Pで実施される電話相談などの業務は、ピアサポート活動の一環として捉え、そこに発生する賃金等は活動に支える交通費等と捉える方がよいといえる。実際に、その程度の賃金しか支給されておらず、賃金で雇われているというものではなく、仲間としての関係性でその役割は存在していた。
著者
山田 信行 ヤマダ ノブユキ Yamada Nobuyuki
出版者
駒澤大学文学部社会学科
雑誌
駒澤社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
no.53, pp.129-153, 2019-10

グローバル化という長期的趨勢の結果、資本主義というシステムは世界の「普遍」を担うものとなった。グローバル化のもとで、様々な社会問題が引き起こされていることを考慮に入れるとき、なぜ資本主義が世界の「普遍」を担うことになったのかをあらためて問い直す必要があろう。本稿は、資本主義の生成に際して、人々が資本主義を選好する原因を解明する作業にほかならない。本稿においては、資本主義形成の重要なメルクマールである「自由な賃労働」という種差的構造の生成に照準を当てることによって、単なる強制や暴力によるだけではない構造の形成のあり方を概念的に把握することを試みる。この作業を通じて、資本主義への構造転換あるいは移行は、移行によって解体されることになる前資本主義的な社会関係が存続していることによって、かえって容易になる可能性があることを指摘したい。加えて、本稿においては、資本主義とは異質な社会関係の将来的帰趨について展望するとともに、そうした社会関係が世界システムから失われた場合に想定される事態についても考察を試みる。この考察は、資本主義以後の社会、すなわちポスト資本主義社会に求められる要件を明らかにし、期待される制度のあり方についても、一定の回答を提示することになる。