著者
中丸 茂
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.53-69, 2001-03

本論文では、随伴性の心理学の観点により、モラル・ハラスメントを分析し、精神的な暴力や精神的な嫌がらせの過程で使用される方法の一般法則を推論することを目的とした。モラル・ハラスメントとは、精神的な暴力・精神的な嫌がらせであり、支配の段階と暴力の段階の2つの段階があり、加害者の特徴として、自己愛的な性格があげられ、支配の段階と暴力の段階という2つの段階を踏む(Hirigoyen,M-F.1998)。支配の段階と暴力の段階では、加害者が被害者に「負の感情」を生じさせ、また、周囲のひとの被害者に対する感情を「正の感情」から「負の感情」に変換する方法がとられる。モラル・ハラスメントで使用される方法を形式化すると、手続き-手続き間の変換、性格-性格間の変換、手続き-性格間の変換、手続き-感情間の変換、対処不可能な状態を生じさせる不安定な手続き、被害者の行う加害者や周囲の人に対する手続き機能お取り消しといったことが行われ、その際に使用される被害者につての悪口や悪評の作成過程では、否定文の法則、一部強調の法則、動詞の切り取り、抽象化の法則といった法則が予測される。モラル・ハラスメントに対する対処としては、行われていることがモラル・ハラスメントであることを認識するために、「愛情」なのか、「支配・暴力」なのかといったような手続きを行う目的の違い、ボトムアップ型の悪口なのか、トップダウン型の悪口なのか、人物批判、行動批判、感情批判、思考批判などを区別し、形式化されたモラル・ハラスメントの方法を使って、他の解釈を加害者にフィードバックする必要がある。
著者
谷口 泰富 中丸 茂 東海林 義信 迎 隆
出版者
駒澤大学文学部社会学科研究室
雑誌
駒澤社会学研究 = Komazawa journal of sociology (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
no.21, pp.p23-34, 1989-03
被引用文献数
1

本研究は,視覚Vigilance課題におけるPerformanceの変動と生理学的指標との関係について検討した。被験者は,本学心理学専攻の学部生14名であった。結果,正反応数とSPLの間に負の相関が認められ,時間経過に伴いα波の増加が観察された。一方,心拍数,呼吸数の減少傾向が認められた。全体的には,Performanceの低下が覚醒水準の低下と平行関係にあると思われる資料が提供されたものの,詳細に検討するとPerformanceの変動様式と各指標の変動様式は必ずしも一義的に対応しているとはいいきれない側面がある。したがって,指標によって反映される要因が異なっているのではないかと思われる。さらに,個人差,生体リズムおよび指標の感受性の問題も指摘された。
著者
山田 信行 ヤマダ ノブユキ Yamada Nobuyuki
出版者
駒澤大学文学部社会学科
雑誌
駒澤社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
no.53, pp.129-153, 2019-10

グローバル化という長期的趨勢の結果、資本主義というシステムは世界の「普遍」を担うものとなった。グローバル化のもとで、様々な社会問題が引き起こされていることを考慮に入れるとき、なぜ資本主義が世界の「普遍」を担うことになったのかをあらためて問い直す必要があろう。本稿は、資本主義の生成に際して、人々が資本主義を選好する原因を解明する作業にほかならない。本稿においては、資本主義形成の重要なメルクマールである「自由な賃労働」という種差的構造の生成に照準を当てることによって、単なる強制や暴力によるだけではない構造の形成のあり方を概念的に把握することを試みる。この作業を通じて、資本主義への構造転換あるいは移行は、移行によって解体されることになる前資本主義的な社会関係が存続していることによって、かえって容易になる可能性があることを指摘したい。加えて、本稿においては、資本主義とは異質な社会関係の将来的帰趨について展望するとともに、そうした社会関係が世界システムから失われた場合に想定される事態についても考察を試みる。この考察は、資本主義以後の社会、すなわちポスト資本主義社会に求められる要件を明らかにし、期待される制度のあり方についても、一定の回答を提示することになる。

1 0 0 0 IR 態度と随伴性

著者
中丸 茂
出版者
駒澤大学文学部社会学科研究室
雑誌
駒沢社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
no.29, pp.103-119, 1997-03

本論文は、態度について随伴性の観点より考察することにより、社会心理学と行動分析学が一つのパラダイムを共有することの有効性を提唱するものである。態度は、社会心理学において、潜在的な説明変量として取り扱われるが、その測定には質問紙法や評定尺度法が用いられることが多く、ゆえに、測定されたデータは言語行動である。社会心理学では、そこで得られた言語行動が態度を表すものとし、行動の理解・説明・予測に使用される。測定データである言語行動を態度(言語行動としての態度=態度行動)として取り扱うことにより、態度を他の言語行動と同様に、タクト、マンド、イントラバーバル、エコーイック、オートクリティックに分類可能であり、これらの観点からの新たなる研究テーマが導かれるであろう。また、態度行動は、随伴性形成行動の目的行動として、そして、ルール支配行動のルールとして取り扱うことが出来る。随伴性の観点から態度を研究することにより、社会心理学の知見を行動分析学においても共有することが可能になり、さらに、心理学における態度の研究テーマを拡げていくことが可能性となる。