著者
小森田 龍生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.3, pp.117-126, 2013-03

日本の自殺は1998年に前年比およそ3割増しの大幅な増加を示して以降、特に男性においては自殺者数、自殺率ともに統計史上もっとも高い水準で今日に至っている。近年では若年~中堅層(20~39歳)の自殺増加が顕著な傾向として現れており、本稿では既存統計資料の整理を通じてこの現象の追求すべき課題を探っていく。統計資料の整理から見出されるのは、 ①98年以降、若年~中堅層の自殺率が増加傾向にあるということは統計上間違いなく、この点は他の年齢層に比較して近年の特徴の一つとして捉えることができる。 ②若年~中堅層の自殺増加傾向は男女に共通するものであるが、男性の自殺率は女性に比べて約2倍と大きな差がある。 ③原因・動機別では、男性は女性に比べて、「経済・生活問題」、「勤務問題」といった経済的な要因の占める割合が大きい。 ④都道府県単位で見たところによれば、若年~中堅層の自殺率に地域差は少なく、この年齢層の自殺増加が全国的な現象であるといえる、といった点となる。これらのことから、自殺増加の社会的背景・その影響力は若年~中堅層に広範囲かつ性別を超えて作用しているが、とりわけ同年齢層の男性に強く作用しているということがわかる。最後にBaudelot & Establet(2006=2012)の議論を参照しながら、短い考察を加えた。

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