著者
小森田 龍生
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.211-225, 2016 (Released:2017-01-15)
参考文献数
32

本稿の目的は,いわゆる過労「死」と過労「自殺」の比較を通じて,過労自殺に特有の原因条件を明らかにすることである. 原因条件の導出にあたっては,クリスプ集合論に基づく質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis, QCA)を採用し, 分析対象は労災認定請求・損害賠償請求裁判に係る判例58件を用いた. 過労死, 過労自殺とも, 複数の原因条件が複雑に絡み合い生じる現象であるが, 本稿では具体的にどのような原因条件の組合せが過労死ではなく過労自殺の特徴を構成しているのかという点に焦点を定めて分析を実施した. 分析の結果からは, 過労自殺を特色づけるもっとも基礎的な原因条件はノルマを達成できなかったという出来事であり, そこに職場における人間関係上の問題が重なることで過労死ではなく過労自殺が生じやすくなることが示された. この結果は, これまで過労自殺と呼ばれてきた現象が, 実際には通常の意味における過労=働きすぎによってではなく, ノルマを達成できなかった場合に加えられるパワーハラスメント等, 職場における人間関係上の問題によって特徴づけられるものであることを明らかにするものである.
著者
小森田 龍生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.93-101, 2022-03-23

本稿では、日本における性的少数者(ゲイ・バイセクシュアル男性)のメンタルヘルス悪化のメカニズムを、要因間の関連性と時間の経過に伴う影響力の変化に注目して明らかにすることを目的として実施した調査結果の一部を報告する。昨年度、本誌に掲載された調査報告に続く本稿では、メンタルヘルス問題と深いかかわりがある自殺念慮や自殺未遂経験(歴)、そのほか関連が予想される心理的変数およびカミングアウト経験の有無等を中心に集計結果を提示する。昨年度の調査報告と異なる視点として、本稿では異性愛男性とゲイ・バイセクシュアル男性との比較にくわえ、ゲイ男性とバイセクシュアル男性との比較を行った。その結果、ほとんどの変数に関して異性愛男性とゲイ・バイセクシュアル男性との間では異なる回答傾向が認められたが、ゲイ男性とバイセクシュアル男性との間では共通した回答傾向が確認された。たとえば自殺念慮や自殺未遂経験とも異性愛男性に比べてゲイ・バイセクシュアル男性の該当割合が高く、ゲイ男性とバイセクシュアル男性との間には目立った違いはなかった。ゲイ男性とバイセクシュアル男性との間で比較的に大きな違いがあったのはカミングアウト経験の有無であり、ゲイ男性のカミングアウト経験割合が高かった。カミングアウト経験とメンタルヘルスとの関連を調べたところ、カミングアウト経験がある場合にメンタルヘルスの状態が悪い傾向にあることが確認された。
著者
小森田 龍生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-107, 2021-03-23

本稿では、日本における性的少数者(ゲイ・バイセクシュアル男性)のメンタルヘルス悪化のメカニズムを要因間の関連性と、時間の経過に伴う影響力の変化に注目して明らかにすることを目的として実施した調査結果の一部を報告する。調査対象は、日本国内に居住する20~60歳までのゲイ・バイセクシュアル男性、および異性愛男性である(共に学生、および外国籍の者を除く)。調査の実施方法は民間調査会社に登録するアンケートモニターを対象としたインターネット調査である。回収数はゲイ・バイセクシュアル男性1,684件、異性愛男性1,854件であり、データクリーニング後のサンプルサイズはゲイ・バイセクシュアル男性1,668件、異性愛男性1,851件であった。回答者の平均年齢は、ゲイ・バイセクシュアル男性41.69歳、異性愛男性47.26歳であった。メンタルヘルスについて、K6尺度をもちいてたずねた結果、ゲイ・バイセクシュアル男性の平均値は異性愛男性に比べて高く、メンタルヘルスの状態が悪い傾向にあることが確認された。また、メンタルヘルスに影響を与える要因のひとつとして想定しているいじめ・ハラスメント被害経験についてもゲイ・バイセクシュアル男性において経験割合が高く、クロス集計の結果からも2つの変数の関連性が示唆された。
著者
小森田 龍生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.3, pp.117-126, 2013-03

日本の自殺は1998年に前年比およそ3割増しの大幅な増加を示して以降、特に男性においては自殺者数、自殺率ともに統計史上もっとも高い水準で今日に至っている。近年では若年~中堅層(20~39歳)の自殺増加が顕著な傾向として現れており、本稿では既存統計資料の整理を通じてこの現象の追求すべき課題を探っていく。統計資料の整理から見出されるのは、 ①98年以降、若年~中堅層の自殺率が増加傾向にあるということは統計上間違いなく、この点は他の年齢層に比較して近年の特徴の一つとして捉えることができる。 ②若年~中堅層の自殺増加傾向は男女に共通するものであるが、男性の自殺率は女性に比べて約2倍と大きな差がある。 ③原因・動機別では、男性は女性に比べて、「経済・生活問題」、「勤務問題」といった経済的な要因の占める割合が大きい。 ④都道府県単位で見たところによれば、若年~中堅層の自殺率に地域差は少なく、この年齢層の自殺増加が全国的な現象であるといえる、といった点となる。これらのことから、自殺増加の社会的背景・その影響力は若年~中堅層に広範囲かつ性別を超えて作用しているが、とりわけ同年齢層の男性に強く作用しているということがわかる。最後にBaudelot & Establet(2006=2012)の議論を参照しながら、短い考察を加えた。
著者
小森田 龍生
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.211-225, 2016

本稿の目的は,いわゆる過労「死」と過労「自殺」の比較を通じて,過労自殺に特有の原因条件を明らかにすることである. 原因条件の導出にあたっては,クリスプ集合論に基づく質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis, QCA)を採用し, 分析対象は労災認定請求・損害賠償請求裁判に係る判例58件を用いた. 過労死, 過労自殺とも, 複数の原因条件が複雑に絡み合い生じる現象であるが, 本稿では具体的にどのような原因条件の組合せが過労死ではなく過労自殺の特徴を構成しているのかという点に焦点を定めて分析を実施した. 分析の結果からは, 過労自殺を特色づけるもっとも基礎的な原因条件はノルマを達成できなかったという出来事であり, そこに職場における人間関係上の問題が重なることで過労死ではなく過労自殺が生じやすくなることが示された. この結果は, これまで過労自殺と呼ばれてきた現象が, 実際には通常の意味における過労=働きすぎによってではなく, ノルマを達成できなかった場合に加えられるパワーハラスメント等, 職場における人間関係上の問題によって特徴づけられるものであることを明らかにするものである.