著者
澤田 次郎
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
政治・経済・法律研究 = Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.19-76, 2020-03

本稿は1880年代における参謀本部の対清情報活動の実態を,福島安正中尉(のち大尉)を主軸に据えて考察するものである。そこでは主に以下の3点を検証した。第一に軍事関連施設の偵察である。まず福島は北京から内モンゴルを,ついで杉山直矢少佐とともに,①上海─南京,②煙台─天津を旅行し,兵要地誌調査を行った。第二に清国社会の観察である。杉山と福島はそうした過程で農民,商人から官吏に至るまで,さまざまな人々に接触し,自国と清国の違いを実感した。第三に北京での清国軍のデータ収集である。公使館付武官となった福島は,清国軍の最新データを収集することに努め,重要文書を入手して大量の資料を日本にもたらした。以上の三つの段階をふまえて,また他の派遣将校たちの情報収集と合わせて,日本陸軍は日清戦争の約10年前から清国軍の全体像をほぼつかむようになっていたのではないかと考えられる。

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CiNii 論文 -  1880年代における日本陸軍の対清情報活動 : 福島安正を中心として (大石高久教授 退職記念号) https://t.co/FJfi8PWVk2 #CiNii

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