著者
真鍋 公希
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-51, 2019

作田啓一は, 生の経験の中にあらわれる非合理性を捉えるための理論体系の構築に一貫して取り組んだ社会学者である. 先行研究では, 彼の生の経験への関心が中心的に論じられてきた. しかし, 作田の特徴は, 生の経験への関心だけでなく, それとは矛盾するように思われがちな体系化への志向性をも兼ね備えている点にあるように思われる. この問題意識に基づき, 本稿では作田の思想における理論の位置づけについて検討する. 本稿では, まず, 『命題コレクション社会学』の付論に注目し, 水平的関係と垂直的関係という二つの関係性を抽出する. 続いて, 現代社会学と小林秀雄に向けた作田の批判を検討し, 批判の要点が, 両者がともに, 現実を水平的/垂直的関係に還元して論じようとする点にあることを明らかにする. 最後に, 作田の犯罪分析を取り上げ, 彼が水平的関係と垂直的関係の両方を論じようとしていたことを指摘する. 以上から, 作田は社会学的な説明(水平的関係)と生の経験(垂直的関係)の二つを結びつけた理論的視座の構築を試みていたことを指摘し, その理論によって一つの「全体」を仮構していたと結論づける.

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"水平的関係だけを捉えようとする現代社会学には奥行きを伴った「面白さ」がないのに対し,小林の議論は超歴史的な次元のみに注目することで,水平的関係の広がりの中に具体的な体験を位置づけようとしない" →論文

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