- 著者
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澤田 典子
- 出版者
- 千葉大学教育学部
- 雑誌
- 千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, pp.247-261, 2020-03
[要約]本稿は,ギリシア世界の権力者崇拝の文脈にマケドニア王フィリポス2世を位置づけ,権力者崇拝という現象の発展における彼の歴史的意義を明らかにすることを目的とする。前半部(前号掲載)では,フィリポス2世以前のギリシア世界における権力者の生前崇拝を示唆する事例と,ギリシア諸都市がフィリポス2世に神的崇拝を捧げたとされる事例を検討し,後半部(本号)では,彼自身が自己神化を志向していたことを示すとされる事例を検討した。フィリポス2世は,晩年に諸都市から宗教性を帯びた大きな栄誉を受けており,ブラシダスからリュサンドロスへと発展した外部権力者への「迎合」としての都市祭祀の流れに大きくはずみをつけたと見ることができる。さらにその最晩年には,自身のみならず自身の家族をも神々と肩を並べる存在として宗教的なコンテクストに位置づけ,ヘレニズム時代の王朝祭祀へと発展していくひとつの方向性を示したと言える。