著者
瀧澤 弘和
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
経済研究所 Discussion Paper = IERCU Discussion Paper
巻号頁・発行日
no.329, 2020-06-05

近年ゲーム理論の一部で,これまでほとんど省みられなかったデイヴィド・ルイス独自の共通知識概念が新たな関心を呼び起こしている.本稿は,この研究潮流の存在を背景として,ルイスの『コンヴェンション』を改めて読み解き,ゲーム理論を経由した現代の経済学的制度論の視点からその射程と限界を見定めることを目的とした研究ノートである.ルイスの分析枠組は,ある特定の性質を持った事態(基底) が存在することとして共通知識を定義することで,共通知識が生成されるメカニズムを明示的に論じることができる点で独自であり,ゲームをプレーする主体の経験の共有がゲームの均衡プレーを可能にするという「外在主義的」な魅力を持っている.また,コンヴェンションの当事者たちがコンヴェンションに関する知識を持つという主張のように,制度の知識の問題を明示的に取り上げたことは,制度批判や制度変化における反省的思考の役割の考察可能性を開くものである.しかし,ルイスがコーディネーション問題だけに焦点を当てたことは,彼の議論を制度一般の理論へと拡張しようとする際にいくつかの点で慎重でなければならないことを意味している.また,彼がなぜ「コーディネーション均衡」という一般的でない均衡概念を使用しているのかという,これまであまり明確に回答されていなかった謎について,コンヴェンションが規範の一つの種だとする主張に結びつけた解釈を提示する.

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CiNii 論文 -  ルイス『コンヴェンション』を制度論から読み直す―前半部の議論を中心として― https://t.co/UFMW3ncmXA
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