著者
藤原 正寛 瀧澤 弘和 池田 信夫 池尾 和人 柳川 範之 堀 宣昭 川越 敏司 石原 秀彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究ではインターネットに代表される情報化技術の進展が経済的取引のガバナンスにどのような影響を与えるのかを、近年発展してきた経済学的手法(情報の経済学、組織の経済学、メカニズム・デザイン論、ゲーム理論など)を用いて分析することを目的としている。全研究期間を通じ研究会を開催することで、情報技術の進展と拡大がどのような経路をたどって、どのような形で経済活動や経済組織に影響を与えるかについて以下のいくつかの論点に分類して分析することができた。1.情報化革命とコーポレートガバナンス--情報化技術が進展することによって、情報量の爆発、経済のスピード化、グローバル化などの現象が発生し、それによって従来とはことなるガバナンス構造を持つ経済組織が活動できるようになった。2.アーキテクチャーとモジュール化--公開されたアーキテクチャーに基づいてインターフェイスを標準化することで、各分業をモジュール化することが可能になる。それによって、分業間の取引に市場原理が導入され、より分権的な分業が可能になる。3.モジュール化とオープン化--モジュール化はバンドリングやカプセル化の総称、オープン化はインターフェイスの共通化の動きを表す。カプセル化はアーキテクチャーを所与としたときに内生的に説明できることが示された。4.ディジタル化--財・サービスのディジタル化が進むことで、複製を作ることが容易になり、財・サービスを提供する初期費用が回収できないために、事前のインセンティブと事後の効率化が矛盾してしまっている。5.コーディネーションの電子化--情報技術の進歩はプログラムによるコーディネーションを可能にさせた。
著者
瀧澤 弘和
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
経済研究所 Discussion Paper = IERCU Discussion Paper
巻号頁・発行日
no.329, 2020-06-05

近年ゲーム理論の一部で,これまでほとんど省みられなかったデイヴィド・ルイス独自の共通知識概念が新たな関心を呼び起こしている.本稿は,この研究潮流の存在を背景として,ルイスの『コンヴェンション』を改めて読み解き,ゲーム理論を経由した現代の経済学的制度論の視点からその射程と限界を見定めることを目的とした研究ノートである.ルイスの分析枠組は,ある特定の性質を持った事態(基底) が存在することとして共通知識を定義することで,共通知識が生成されるメカニズムを明示的に論じることができる点で独自であり,ゲームをプレーする主体の経験の共有がゲームの均衡プレーを可能にするという「外在主義的」な魅力を持っている.また,コンヴェンションの当事者たちがコンヴェンションに関する知識を持つという主張のように,制度の知識の問題を明示的に取り上げたことは,制度批判や制度変化における反省的思考の役割の考察可能性を開くものである.しかし,ルイスがコーディネーション問題だけに焦点を当てたことは,彼の議論を制度一般の理論へと拡張しようとする際にいくつかの点で慎重でなければならないことを意味している.また,彼がなぜ「コーディネーション均衡」という一般的でない均衡概念を使用しているのかという,これまであまり明確に回答されていなかった謎について,コンヴェンションが規範の一つの種だとする主張に結びつけた解釈を提示する.
著者
寺田 剛陽 鳥居 悟 安野 智子 瀧澤 弘和 新 真知
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2013-GN-88, no.9, pp.1-8, 2013-05-09

昨今,標的型攻撃が日常的な脅威となっている.攻撃の発端となる標的型メールを技術的に検知することは非常に難しいため,組織の IT 管理部門だけでなく従業員 1 人 1 人が受信メールに注意深く対処する必要がある.今回我々は,標的型メール対策を人間のリスク認知の観点から検討し,検証実験を行ったので,得られた知見を報告する.