- 著者
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小松 秀雄
Hideo KOMATSU
- 雑誌
- 神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.2, pp.49-64, 2020-12-20
高知県では大きな芝居絵屏風を飾る夏祭りが行われ、土佐の夏の風物詩として地域の人びとに親しまれている。芝居絵屏風は大きな二曲一隻の屏風であり、幕末の絵師・金藏(1812-1876)、通称、絵金が芝居絵屏風を描き始めた。日本の近代化の過程で娯楽の多様化にともない、夏祭りで芝居絵屏風を飾ることは少なくなったが、1960年代の時代背景の下で再び注目されるようになった。それから間もなく、高知県赤岡町では、1977年に絵金没後100年を記念するコメモレイションとして絵金祭りが行われた。赤岡町では1993年に土佐絵金歌舞伎伝承会が結成され、さらに、2005年には絵金の作品を展示する絵金蔵も造られた。高知県立美術館では、2012年に、絵金生誕200年を記念するコメモレイション「大絵金展 極彩の闇」が開催された。本稿では、集合的記憶の社会学の視点から、絵金のコメモレイションに関する多様な資料を分析し論述してみる。