著者
白井 利明
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 総合教育科学 (ISSN:24329630)
巻号頁・発行日
no.69, pp.163-174, 2021-02-28

アーネット(Arnett, 2000, 2015)は,自分の人生に責任をもとうとする主体を重視する立場から,青年期から成人期への移行は単なる青年期の延長ではなく,新しい発達段階としての成人形成期(emerging adulthood)であると提案した。現代の若者は,成人形成期にアイデンティティのための労働を探求し,自分の可能性を信じているとしたのである。この提案をめぐって心理学のみならず社会学からも論争が起きた。成人形成期は恵まれた社会階層の現象を過度に一般化したもので,社会構造の影響が無視されており,かれらの楽観性は社会的排除に対する心理的防衛にすぎないと批判された。本稿はこの論争を整理することで,成人形成期は社会的排除の結果であるだけでなく,たとえば若者なりの新たな可能性の認識に基づくものであり,そこに社会現実を乗り越えようとする主体のダイナミズムが示されているのではないかと問題提起をした。

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白井利明(2021) ジェフリー・アーネットにとって成人形成期(emerging adulthood)とは何か : 発達心理学における社会構造と主体の問題, Memoirs of Osaka Kyoiku University. Educational science 69, 163-174. https://t.co/rjaiuDJAj9 #CiNii

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