著者
山本 博子
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学紀要 = Bulletin of Toyo Gakuen University (ISSN:09196110)
巻号頁・発行日
no.29, pp.9-25, 2021-02-15

本稿では、『古今和歌集』における過去表現について検討した。本稿において、過去表現とは、過去の助動詞「き」、完了の助動詞「ぬ」と過去の助動詞「き」の複合形式「にき」、完了の助動詞「つ」と過去の助動詞「き」の複合形式「てき」を指す。 平安時代の時間表現についてはすでに様々な議論が重ねられてきたが、資料や用例の扱い方においては各研究によって様々であった。したがって、本稿では、平安時代の言葉の実態をさらに詳細に解明していくための試みとして、用例を『古今和歌集』の和歌のみに限定して検討を行なった。 その結果、動詞の分布状況やアスペクト的意味・空間的意味において、平安時代の物語作品の会話文における用法と大きな違いがないことがわかった。したがって、アスペクト的意味や空間的意味について検討する場合は、基本的には、同時代の物語の会話文と和歌の例を同等に扱ってもよいということを示すことができた。 しかし、一人称移動動詞の例については、物語の会話文と和歌において同様の傾向が見られなかった。このことから、動詞によっては、自分の気持ちや状況を表すことが多い和歌と、自分の行動について取り上げることも多い物語の会話文とで、用法の違いが見られることを示唆することができた。

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