著者
山本 博子
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学紀要 = Bulletin of Toyo Gakuen University (ISSN:09196110)
巻号頁・発行日
no.29, pp.9-25, 2021-02-15

本稿では、『古今和歌集』における過去表現について検討した。本稿において、過去表現とは、過去の助動詞「き」、完了の助動詞「ぬ」と過去の助動詞「き」の複合形式「にき」、完了の助動詞「つ」と過去の助動詞「き」の複合形式「てき」を指す。 平安時代の時間表現についてはすでに様々な議論が重ねられてきたが、資料や用例の扱い方においては各研究によって様々であった。したがって、本稿では、平安時代の言葉の実態をさらに詳細に解明していくための試みとして、用例を『古今和歌集』の和歌のみに限定して検討を行なった。 その結果、動詞の分布状況やアスペクト的意味・空間的意味において、平安時代の物語作品の会話文における用法と大きな違いがないことがわかった。したがって、アスペクト的意味や空間的意味について検討する場合は、基本的には、同時代の物語の会話文と和歌の例を同等に扱ってもよいということを示すことができた。 しかし、一人称移動動詞の例については、物語の会話文と和歌において同様の傾向が見られなかった。このことから、動詞によっては、自分の気持ちや状況を表すことが多い和歌と、自分の行動について取り上げることも多い物語の会話文とで、用法の違いが見られることを示唆することができた。
著者
奥泉(岩本) 香 山本 博子 岡田 美也子
出版者
敬愛大学・千葉敬愛短期大学
雑誌
千葉敬愛短期大学紀要 (ISSN:03894584)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.83-100, 2003-02

教員養成課程の国語科においては、学生自身の言葉の力と子どもの言葉の力を育成する力を、共に育成できる教育内容が考慮されるべきである。一方、一般的な大学生における国語能力の低下の問題に関しては、形式的な国語表現技術を教えるだけでなく、言語活動の起点となる認識の能力から開発、育成していく必要があると考えている。本稿では、先の2点をふまえて行った、音声言語教育の実践として、視覚情報や触覚情報によって物やその形状を言葉で的確に伝え合うゲームを紹介する。
著者
山本 博子 ヤマモト ヒロコ YAMAMOTO Hiroko
出版者
千葉大学国際教育センター
雑誌
国際教育 = International education (ISSN:18819451)
巻号頁・発行日
no.9, pp.75-90, 2016-03

国際化する日本社会において、大学生の英語力育成の強化が求められている。それと同時に、思考の基盤となる日本語力の育成の重要性も認識されてきている。そのような動きを踏まえ、筆者の本務校では、英語教員と日本語教員(筆者)とが共同で、学生達に英語テストと日本語テストを実施し、その相関関係の調査研究を始めた。この調査を行うことにより、日本語力(母語力)が英語力向上にどのように影響しているかを明らかにし、英語教育と日本語教育の今後の課題を見出すことができると考えている。さらに、外国語習得力と母語力との関係性を明らかにすることは、日本語を母語としない人々に対する日本語教育の現場において、学習者の日本語力を、母語力と関係付けて捉えていくためにも役立つであろう。現在は、2015年9月に行った予備調査の結果の分析を行い、英語テスト・日本語テストの問題点を明らかにし、来年度の本調査に向けての準備を進めている。本稿では、予備調査の結果を示し、そこから明らかになった学生達の日本語力の問題点について考察した。It is widely said that English language competence of university students is vital for Japan inorder to earn the status of an internationalized country. At the same time, the importance of theirnative language competence as the fundament for creative thinking is emphasized. In an attempt toaddress these issues English and Japanese language tests were given to Toyo Gakuen Universitystudents, and the correlation between their English and Japanese competence was investigated withthe purpose of finding to what degree native Japanese competence influences the progress inacquiring English as a foreign language. The scope of this research includes identifying problems inboth English and Japanese language education and developing effective teaching strategies.The findings of this research also imply that native language (L1) competence should be takeninto consideration when teaching Japanese as a second language (JSL) to non-native students.In this paper, I analyze the results of the preliminary research conducted in September, 2015, andpoint out to the problems the surveyed students encountered in the language tests.75