- 著者
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児玉 望
- 出版者
- 熊本大学文学部言語学研究室
- 雑誌
- ありあけ : 熊本大学言語学論集 (ISSN:21861439)
- 巻号頁・発行日
- no.20, pp.87-110, 2021-03
アクセント以外が共通語化した鹿児島方言の複合終助詞ガヨとヨサについて、前者については終助詞ガのもつさまざまな用法のうち、直接経験を、それを自ら認識できないと話し手が判断した聞き手に伝達する用法に限定するもの、後者については、終助詞ヨの情報伝達用法のうち、特定の聞き手の関心事と話し手が判断した情報について話し手の判断を伝える用法として説明する。この論証のために、前者では終助詞ガ、後者では終助詞サの用法を概観し、さらに、これら二つの終助詞の用法を通時的に解釈することを試みる。終助詞ガが、終助詞ワと並んで、終助詞ヨ/ゾと対立する用法をもつ祖体系から継承されたと比較方言学的に推論できるのに対し、終助詞サは、方言談話録音資料の分析に基づいて,フィラーが接語化を経て終助詞として解釈されるようになった例として、20 世紀半ば以降の改新と説明できると主張する。