- 著者
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河村 英和
- 出版者
- 跡見学園女子大学
- 雑誌
- 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部紀要 = Atomi Tourism and Community Studies (ISSN:21899673)
- 巻号頁・発行日
- no.6, pp.23-41, 2021-03
20世紀初頭から第二次大戦まで、イタリアの絵葉書はメディア的責務を負っていた。とくに大詩人ダンテとダヌンツィオについては彼らの存在そのものが愛国心を鼓舞する宣伝装置として、絵葉書に利用されることが少なくない。種類も多いうえデザイン性も高く、なかには明らかに政治的に利用された過激なものまであった。第一次大戦期は、オーストリアの国境付近の山岳地帯や「未回収の」土地の風景を写した絵葉書に、カルドゥッチらの愛国的な詩を添えたシリーズも登場した。ファシズム期は、美しいイタリアの風景写真絵葉書に、有名無名の詩人たちの詩の引用を添えたものが流行し、あえて場所を特定しない「アノニマスな」風景にすることによってロマンチックな詩情を演出させる場合もあれば、詩人ゆかりの「特定の」地を売りにするものもあり、後者は観光絵葉書としても機能した。本論では、とくに著名な詩人ダンテ、カルドゥッチ、ダヌンツィオをテーマにした1910-50年代に発行された絵葉書を中心に、愛国プロパガンダ性やナショナル・ロマンティシズム的側面、時代ととも変化するその題材の傾向などを検証する。