- 著者
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吉田 容子
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- E-journal GEO
- 巻号頁・発行日
- no.1, pp.22-29, 2006
- 被引用文献数
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男性による女性支配システムの構造解明や,そこに発生する権力関係のあぶり出しを目指すジェンダー研究は,いまや多様な学問領域に浸透している.地理学においても,1970年代に入ると,英語圏の女性研究者たちの間から,従来の地理学研究が男性中心主義に偏ったものであるとする批判がなされるとともに,空間に刻まれた男女の非対称の権力関係,すなわちジェンダー関係をあぶり出す作業が行われるようになった.本稿ではまず,英語圏を中心としたジェンダー研究の展開を整理する.次に,日本の地理学におけるこの方面の研究をもとに,これまでの到達点を明らかにする.さらに,個人レベルの男女間に潜む権力関係に着目し,それがより大きな権力関係へと転化され空間に刻まれ,そして,またそれが,空間に映し出されていることを示すため,二つの事例をあげる.一つは,大都市圏郊外につくられた「監視空間」ともいうべき住宅地におけるジェンダー関係であり,もう一つは,1950年代に軍事基地の建設が本格化した沖縄で,米兵相手につくられた特飲街にみられるジェンダー関係である.