著者
橋本 博文
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.182-193, 2011
被引用文献数
13

本稿の目的は,これまで文化心理学において議論されてきた相互協調的自己観に焦点を当て,日本人の相互協調性が共有され,維持される一つのプロセスを分析することにある。文化的自己観尺度を用いた研究1と研究2の結果をもとに,本稿ではまず,現在の日本人が相互協調的な心のあり方や生き方を必ずしも好ましく受け入れているわけではないこと,そして日本人にとっての相互協調性はあくまで文化的に「共有」された信念であることを主張する。さらに,相互協調的に振る舞う人に対する印象評定を扱った研究3の結果から,相互協調的に振る舞うことで他者から好意的な反応を得るだろうという予測,そしてその予測を生み出す文化的共有信念の重要性を指摘する。また,実施した一連の研究知見をもとに,日本人の相互協調性に関する本稿の理解――個々人が共通して持っている価値や信念ではなく,文化的に共有されている(他者の行動原理に関する)信念こそが,日本人に相互協調的な振る舞いをさせる誘因となると同時に,この誘因に従う行動そのものによって相互協調行動が維持され,そうした行動に関する信念もまた共有され維持されるという理解――について議論し,本稿が採用する文化への制度アプローチが,今後の文化心理学研究に与えるインプリケーションを考察する。<br>

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”個々人が共通して持っている価値や信念ではなく、文化的に共有されている信念がこそが、日本人に相互協調的振る舞いをさせる要因となる。”→CiNii 論文 -  相互協調性の自己維持メカニズム http://t.co/wiF0TGNwQG #CiNii

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