著者
杉浦 明 原田 久 苫名 孝
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.303-309, 1977
被引用文献数
2 9

前報に引きつづき, 平核無について花蕾期より7月下旬までの間, 樹上でのエタノール処理が脱渋とその後の渋味の再現, および果実の形質等に及ぼす影響を調べた.用いたエタノール濃度は5%で, 5mlあるいは10mlずつポリエチレン袋に入れて, 花蕾あるいは果実を樹上で被袋処理し, 脱渋を確かめたうえで除袋した.<br>1) 7月下旬の処理果実を除いて, 除袋後1~2週間ぐらいの間に可溶性タンニンが再現し, とくに処理時期,が早いほど再現の程度が大きかった. また, 6月中下旬までの処理果実ではほぼ果肉全面が渋味を呈したが, それ以後の処理果実では果てい側半部あるいは果てい部のみに渋味の再現があった.<br>2) 収穫果 (9月18日) について褐斑の発生状態をみると, 渋味が果肉全面にあらわれた処理果実では褐斑は殆どみられないか, あっても果頂部付近にわずかに局在している程度であったが, 6月末以降の処理果実では渋味の再現した果てい部を除いて果肉全面に強い褐斑がみられた.<br>3) 脱渋処理の時期によって果形や果実の肥大にかなりの影響がみられた. すなわち, 概して早い時期 (5月中旬から6月中旬まで) の処理では果形が扁平になる傾向を示し, また, 強い褐斑を呈するようになった果実(6月末処理) を境にして横径生長の著しい抑制がみられ, 果形にも大きなヒズミを生じた. しかし, 処理時期がさらに遅くなるにつれて横径生長の抑制は徐々に弱まり, 7月末の処理果実では果実の大きさ, 果形ともに無処理果実と変わりないくらいに復した.<br>4) 渋味の再現との関連で, 果肉細胞の分裂を調べたところ, 開花後の分裂の最盛期は5月末から6月上旬にかけてであり, 6月下旬には殆ど停止していた. また,分裂細胞はもっぱら果実中部から果てい部にかけて分布していた. 脱渋処理は一時的に分裂を抑制したが, すぐに回復した.<br>5) 脱渋処理時期によってみられた渋味再現の様相について若干の考察を行なった.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? カキ果実の脱渋性に関する研究(杉浦 明ほか),1977 https://t.co/ktYRUjnfQc 前報に引きつづき, 平核無について花蕾期より7月下旬までの間, 樹上でのエタノ…

収集済み URL リスト