- 著者
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三隅 二不二
篠原 弘章
杉万 俊夫
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.77-98, 1977
- 被引用文献数
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本研究は, 地方官公庁における管理・監督者のリーダーシップに関して, 客観的測定方式を作成し, その妥当性を検討しようとするものである。<BR>まず, 基礎資料として, 地方官公庁の管理・監督者から, 自由記述によって, 彼らの職場における上司としての役割行動についての行動記述を収集した。この基礎資料をもとに質問項目を作成し, 数回にわたる専門家会議を経て, 調査票を作成した。質問項目はすべて, 部下である一般職員が上司のリーダーシップ行動について回答するという, 部下評価の形式をとった。また, 係長と課長のリーダーシップ行動を各々区別して評定するように調査票を作成した。係長のリーダーシップ行動に関する質問項目は49項目であり, 課長のリーダーシップ行動に関する項目は, 係長用49項目に5項目を追加した計54項目である。調査票には, リーダーシップ得点の妥当性を吟味するための資料として, モチベーター・モラール, ハイジーン・モラール, チーム・ワーク, 会合評価, コミュニケーション, メンタル・ハイジーン, 業績規範に関する質問項目40項目 (モラール等項目) を含めた。なお, 調査票の質問項目はすべて, 5段階の評定尺度項目である。<BR>この調査票を用いて, 集合調査方式により調査を実施した。調査対象は, 栃木県, 東京都, 静岡県, 兵庫県, 北九州市, 福岡市, 久留米市, 都城市の自治体に勤務している一般職員967名である。<BR>分析は, 単純集計に引続いて, 因子分析を行なった。因子分析は次の3つに分けて行なった。すなわち, (1) 係長のリーダーシップに関する49項目, (2) 課長のリーダーシップに関する54項目, (3) モラール等項目40項目, に対する因子分析である。因子分析にあたっては, 相関行列の主対角要素に1.00を用いて, 主軸法によって因子を抽出した後, ノーマル・バリマックス法によって因子軸の回転を行なった。<BR>係長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 次の4因子が見出された。すなわち, 「集団維持の因子」・「実行計画の因子」・「規律指導の因子」・「自己規律の因子」の4因子である。「集団維持の因子」は, 集団維持のリーダーシップ行動 (M行動) に関する因子であり, 「実行計画の因子」・「規律指導の因子」・「自己規律の因子」の3因子は, 集団目標達成のリーダーシップ行動 (P行動) に関する因子であると考えられた。<BR>課長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 次の4因子が見出された。すなわち, 「集団維持の因子」・「企画・調整の因子」・「規律指導および実行計画の因子」・「自己規律の因子」の4因子である。「集団維持の因子」はM行動に関する因子であり, 他の3因子はP行動に関する因子であると考えられた。<BR>係長と課長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 産業企業体でみられた「目標達成への圧力の因子」に相当する因子が見出されず, それに代わって, 規律指導あるいは自己規律の因子のような規律に関する因子が見出されたことは, 地方官公庁におけるリーダーシップ行動の特質と考察された。<BR>また, モラール等項目に関する因子分析では, 予め設定した7カテゴリーの妥当性を検証するために8因子解を求めたが, 全般的に, 予め設定した各カテゴリーは, 各因子と1対1の対応をもつことが明らかになった。ただ, メンタル・ハイジーンと業績規範の2カテゴリーは, それぞれ2因子, 3因子構造を有していた。<BR>係長および課長を部下評定によって分類したリーダーシップP-M4類型の効果について分析した。まず, 係長および課長のリーダーシップ・タイプを測定する項目を因子分析の結果に基づいて選定した。係長の場合も, 課長の場合も, P行動測定項目, M行動測定項目をそれぞれ8項目ずつ選定した。<BR>係長のP-M指導類型とモラール等項目得点の関係をみると, 業績規範のカテゴリーを除く各カテゴリーにおいて, PM型が最高点を示し, M型が第2位, P型が第3位, pm型が最下位の平均値を示した。業績規範のカテゴリーにおいては, M型とP型の順位が逆転した。この傾向は, 三隅他 (1970) が産業企業体の第一線監督者において見出したリーダーシップP-M類型効果差の順位と同じである。また, 相関比の2乗の大きさから, コミュニケーション・会合評価の2カテゴリーにおいて, 特にリーダーシップ類型効果差が著しいことが明らかとなり, これは, 行政体における特徴であると考察された。