著者
三隅 二不二 渥美 公秀 矢守 克也
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.11-22, 1989-03-15 (Released:2016-11-23)

The inhabitants' response before and after a landslide disaster was examined. The disaster was characterized by the following three distinctive features. First, in one of the damaged areas, the inhabitants were given, a week in advance, an instruction to evacuate because of an eventual landslide. However, no landslide occurred then. Second, in another damaged area, where no pre-instruction were given, there were 26 victims, while no person was victimized to death in the area mentioned above. Third, some inhabitants constituted a committee to cope with the disaster. We conducted a series of research using face-to-face interview and questionnaire method. 145 of the 241 inhabitants answered the questionnaire. The results showed three major points. First, the instruction for evacuation in the case of pre-landslide, was perceived positively by the inhabitants. Second, some interpersonal networks formed by the inhabitants had much positive effects on their coping with the disaster. Third, the inhabitants tended to believe that the landslide was due more to technical and organizational reasons after and before the disaster than to natural ones.
著者
三隅 二不二 米谷 淳 三隅 譲二 矢守 克也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.2-14, 1992 (Released:2022-07-15)
被引用文献数
1

社会の広範囲にわたって被害をもたらす自然災害に対する対処は,組織レベルで行われることが多い.しかし,多くの組織は自然災害に対する対応のみを目的として機能しているわけではない.したがって.社会的防災力の向上のためには.複数の組織間のネットワーク.地域住民による自主防災組織を効果的に機能させる必要がある.本稿では,これらの問題について,実際の災害に関する事例研究,および,実験室実験の成果を基に論じた.
著者
三隅 二不二 篠原 弘章
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.125-133, 1967-03-31 (Released:2010-03-15)
参考文献数
10

1) 集団決定に参加後6ヵ月間に, 集団決定に参加した45名の運転手の事故率は, 約3分の1に減少した。さらに10ヵ月間においては, 5分の1に減少した。2) 集団決定参加者が, 職場からグループで参加した場合と準単独で参加した場合で, 事故減少率に明らかな差異が見いだされた。集団参加群 (34名) は, 集団決定後6ヵ月間で決定前6ヵ月間の7分の1, 10ヵ月後で決定前10ヵ月間の約9分の1の減少率を示したが, 準単独参加群 (11名) の場合は集団決定前後6ヵ月間で差異がなく, 決定後10ヵ月間で決定前10ヵ月間の約3分の2の減少率であった。3) 集団決定参加者45名全員について事故の自然減少率を考慮した場合は, 集団決定の効果として,a) 集団決定前後6ヵ月間の事故の比較において, 15件の事故のうち4件が, 自然減少率を減却した残差であり, 集団決定の効果として考察される。b) 集団決定前後10ヵ月間の比較においては, 30件のうち, 17件の事故が自然減少率を減却した残差であり, 集団決定の効果として考察される。
著者
小川 暢也 大里 栄子 三隅 二不二 中野 重行
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.116-122, 1973-12-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

本実験は, 競争条件による鏡映描写テスト遂行時の脈拍数およびテストの成績を非競争条件と比較し, さらにそれらの条件下における不安および攻撃性の反応特性について検討することを目的とした.対象は年令18~19才の健康な女子学生40名で, 予め施行したMASの得点19~25の者20名 (Moderate An-xiety Group=MA), 26~37点の者20名 (High AnxietyGroup=HA) であった. さらにこの40名にHGSを施行し, 高得点の者8名 (得点範囲32~48), 低得点の者8名 (得点範囲13~18) を攻撃性に関する分析の対象にした.まず, 被験者は個別に鏡映描写テスト1試行1分間で10回練習した後, 3試行を非競争条件として施行され, ひきつづき別室にてMA-MA, およびMA-HAのpairで競争条件のもとに3試行施行された.脈拍数はpulsemeterによりそれぞれの条件において10秒間の最高値が連続測定された.テスト後HGS, ならびに実験時の自己認知について質問紙法により測定した.結果は, 競争条件と非競争条件間の脈拍数に差を認めたが, HAとMA間に差は認められなかった. 安静時, 教示期, 試行中および試行後とも競争条件下では非競争条件に比べて脈拍数は増加し, 特にテスト第1試行目において顕著な増加が認められた.HGSによる高攻撃性, 低攻撃性群の脈拍数は, 非競争条件間では差は認められなかったが, 競争条件下では2群間に差が認められ, 低攻撃性群が有意に高い値を示した.以上, 競争場面のarousal levelは非競争的な場面よりも高く, 競争という特殊なsocial interactionが生理反応に影響を及ぼすことが確かめられ, しかもMASによる中, 高不安水準よりもHGSによる攻撃性においてその反応に特異性をもつことが示唆された.
著者
河津 雄介 三隅 二不二 小川 暢也 大里 栄子 宮本 正一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.22-30, 1973
被引用文献数
1

本実験は, プラシーボー投与にともなう薬効暗示と実験者の監督的指示とが, 被験者の知覚運動技能や自律反応に及ぼす影響について吟味したものである. 薬効暗示はstimulantとdepressantの二種, 監督的指示はP型, M型および特定の監督的指示を与えないO型の三種であった. 課題は鏡映描写で, 生理反応は指尖脈波を記録し心拍数を指標とした.<BR>仮説は, 1) 鏡映描写の成績や心拍数はプラシーボー投与にともなう薬効暗示の種類によって異なった影響を受けるであろう. 2) 上述の影響は, 実験者の与える監督指示のちがいに応じて異なった相乗効果を及ぼすであろう.<BR>生理反応 (心拍数) については明確な条件差は見出されなかったが, 鏡映描写の成績に次のような条件差が見出された. 仮説Iについては, depressant暗示がstimulant暗示よりも鏡映描写の成績にポジティブな効果を及ぼした. 仮説IIについては次のような結果がみられたedepressant暗示群ではP型の監督指示を受ける群が最も成績がよく, 次にO型でM型は最低であった. 一方, stimulant暗示群ではM型が一位, O型が二位, P型が三位という順位であったが, 条件間の差は有意でなく傾向のみであった.<BR>P型とM型の監督指示の影響が, 薬効暗示がdepressantかstimulantかで異なった相乗効果を及ぼす現象即ち, depressantの場合P型が, stimulantの場合M型が望ましい相乗効果を及ぼすことについて, PM式リーダーシップ論におけるP-M相乗効果との関連から考察が加えられた.
著者
三隅 二不二 黒川 正流
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.169-181, 1971

本研究は, 「集団規模の拡大は群集化傾向と軍隊化傾向を生じる」という仮説を, リーダーシップPM論との関連において実証し, あわせて集団規模と帰属意識およびモラールとの関係を分析することを目的とした。<BR>某製鉄所一般工員4, 418名 (698集団) および某化学工場一般従業員1, 369名 (305集団) に対して, 質問紙による面接調査を実施した。<BR>結果を要約すればつぎの通りである。<BR>(1) リーダーシップM機能についていえば, 職場集団規模の拡大につれて, 一般にM機能の強いPM型もしくはM型の第1線監督者が減少し, M機能の弱いP型もしくはpm型の第1線監督者が増加する傾向が認められた。<BR>(2) リーダーシップP機能についていえば, 強いM機能が伴わないならば, 職場集団規模の拡大につれて, 一般にリーダーシップPおよびPが増加し, あるいは少なくとも減少することはないことが実証された。<BR>(3) 以上の結果から, 職場集団規模の拡大につれて, 軍隊化傾向か, あるいは群集化傾向が生じることが考察された。<BR>(4) 会社もしくは組合, およびその両方に対して高い帰属意識得点を示すものの比率は, 上司のリーダーシップ類型をPM型と認知する成員の中で最も高く, 以下M型, P型, pm型と認知する成員の順にその比率が低下し, 会社もしくは組合, およびその両方に対して低い帰属意識得点を示すものの割合は, 上司をpm型と認知する成員の中で最も高く, 以下P型, M型, PM型と認知する成員の順にその比率が低下することが見出された。<BR>(5) 上記 (4) の結果にもかかわらず, 職場集団規模の大いさは, 会社と組合, およびその両方に対する成員の帰属意識の強さに有意な影響を与えるという証拠は見出されなかった。<BR>(6) 上記 (4), (5) の結果から, 職場集団規模の拡大が会社と組合に対する帰属意識を相対的に高める傾向をもつという仮説が暗示された。<BR>(7) 職場集団規模の拡大につれて, 一般にモラール (チームワーク得点を含む) が低下する傾向が認められた。このことは, リーダーシップの変化による軍隊化傾向および群集化傾向のいずれも, いわゆる職場のモラールを犠牲にして成立することを裏付けるものと解釈された。
著者
三隅 二不二 石田 梅男
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.148-158, 1972-03-31 (Released:2010-11-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1

二段階の監督レベルを含むリーダーシップ類型の相異が, 集団成員の動機づけ, 終末結果に及ぼす効果差を, とくにリーダーシップ・タイプの相補性効果の観点から吟味するため, 実験室的状況を設定した。独立変数として, 第二線監督の指導類型PM型, P型, M型, 第一線監督の指導類型PM型, P型, M型, pm型を構成し, これらの二段階のリーダーシップ・スタイルの組合せのもとで, 集団成員は, IBMカードの穿孔数を3人が協同して数える単純作業に従事させられた。被験者は無作為に実験集団の一つに割り当てられた。一集団は3名の作業者で構成された。3人の被験者よりなる2~3集団は, 1名の監督者のもとで作業を行なったのであるが, これを更にもう1人の第二線監督者が監督した。第二線監督者は, 常時実験室には駐在せずに, ときどき実験室を巡回して, 第一線監督者を指導した。この意味において, 第二線監督者の集団成員に対する影響は第一線監督者を媒介した間接的なものであるが, 第二線監督者と第一線監督者との会話は, すべて部下達の面前で行なわれたので, 第二線監督者の存在とその行動様式は, 集団成員にとって現実的なものであった。被験者は, 平均年齢22才の男子, 63名。第一線監督者は, 心理学専攻の大学院生10名。第二線監督者は, 心理学研究室の助教授3名。1回の作業時間は15分, 1日2回, 全部で8回作業を行なった。結果を要約すれば, 次の通りである。1. 実験者によって設定されたリーダーシップ条件と被験者の認知的反応が一致したものをもって, リーダーシップ条件とした。2. 終末結果としての生産性指数においては, 試行回数の後半において, PM類型群が, 全試行を通じてP-Mが上位であり, 重複類型群であるP-P, M-M及びP-pmは生産性指数が低位であった。3. 集団成員の状況満足度については, 生産性指数ほど明瞭な結果は見出せなかったが, PM類型群全体の得点は, 重複類型群の得点よりも有意に高く, 有意差はないが, 単型Pと単型Mの相補群が中間の得点を示した。
著者
篠原 弘章 三隅 二不二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.136-154, 1977
被引用文献数
1

本研究は, 集団体験を中心とする全国公開研修セミナーにおける2つの訓練計画の効果性を集団発達の過程から検討したものである。被験者は一般企業からの参加者24名。被験者は2つのグループに折半され, セミナーの10セッションに渡る集団過程のうち, 1つの群 (Aグループ) は前半の5回が事例討議 (PMTコース), 後半の5回がSensitivity Training (STコース) であった。他の1群 (Bグループ) はAグループとは逆順のコースを採った。PMTコースでは. P機能とM機能の2つの尺度から成る質問紙を用いて, 各メンバーは討議行動について自己評定と他者評定を行なった。また, すべての10回の会合について会合の魅力が調査された。結果は以下の通りであった。<BR>1. 討議のリーダーシップ行動についての自己評定と他者評定の認知的不一致は3つの測度を用いて分析された。<BR>(1) 自己評定からの他者評定の差を測度とした時の認知的不一致の方向は, 過少評定の方向で生じた。これはP, Mいずれの機能についてもAグループよりBグループで大きかった。<BR>(2) 自己評定と他者評定の相関を用いた認知的不一致を検討すると, AグループではP, Mいずれの機能も第2セッション以降すべて有意な相関を示し, 他方, Bグループでは, M機能の第4セッションのみの相関が有意で, 他はすべて有意な相関が見られなかった。それ故, 自己評定と他者評定の相関による認知的不一致は, AグループよりBグループで大であった。<BR>(3) 自己評定と他者評定の差の絶対値を測度とした認知的不一致は, AグループよりBグループが大であった。また, セッションの進行に伴なう認知的不一致の縮少は, M機能よりもP機能において顕著であった。以上の認知的不一致の両群の相異は, グループ内のリーダーシップ構造の構造化, 未構造化と関連して考察された。<BR>2. 会合魅力の上昇型は, BグループよりAグループに多い傾向にあった (p<. 10)。また, 会合魅力のセッション間の因子分析によると, Aグループでは後期の因子の寄与率が最大であった。この因子は, メンバーの相互啓発と関連するものとして考察された.<BR>3. セミナー全体の総合評価の高い者は, BグループよりもAグループに多い傾向が示された (p<. 10)。
著者
関 計夫 三隅 二不二 岡村 二郎
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.1-12,61, 1969

I. Problem.<BR>This study is one of the action-research projects of the development of student baseball team activities in Kyushu University. The purpote of this study is to analyse their interpersonal relations and to make deveop the human relations in team activities.<BR>II. Subjects.<BR>Subjects are 16 members of baseball team in Kyushu University. They need not always to have special ability for baseball. The team is composed of those who want to play baseball, even if their ability isnot specially fitted to it.<BR>III. Ist ent; Study of the relationship between the individual motor fitness and ability of sociol adjustment.<BR>(1) Motor fitness and ability of baseball. The general motor fitness test was given to 14 members. Tie test consists of six factors, namely, strength, power, abillty, flexibility, endurance and balance.<BR>The rank order from the first to the fourteenth was made by the results of this test. At the some time, the batting rank order was made by the batting achievement of last year. The rank correlation between the order of motor ability and batting order was 0.174 except one who was the 12th in the motor fitness and the 3rd in the batting order-a very hard worker and a typical overachiever.<BR>By the results of questionair which was conducted to the members partiepating in the first camp training this year, it was found:<BR>(a) During five days of the camp training 63% of all members felt the existenc of the cohesiveness of the group as a whole.<BR>(b) Some 80% of all members began to have friendship each other.<BR>(c) Some 70% became awars of the progress of their achievement.<BR>(d) 54% suffered from conflicts between the academic studies and team activities.<BR>(2) Interview survey The aim of this study was to inquire more personally about the same items as that of the above mentioned question. Its results were as follows;<BR>(a) Tho drgree of the cohesiveness of the team as a whole was high.<BR>(b) There were many members who felt that the schedule of the 2nd camp training was too tight.<BR>(c) It was found that each member called each other with nick-name.<BR>(d) They had much interest in the discussion sessions, held twice during the camp training.<BR>(e) Only one member displayed sometimes an agressive behavior. He was sometimes late at the open hour of the camp training. In accordance with the results of the Scciogram as will be described later, he was an isolate.<BR>(3) Sociometric survey.<BR>The sociometric survey was carried out on the last day of the 1st and the 2nb camp training. The formulae of question were as follows:<BR>Among your team members,<BR>(1) Whom would you want to go to a tea shop with?<BR>(2) Whom would you want to take lodgings with?<BR>(3) Whom do you like best?<BR>(4) Whom would you like as your partner of your experiment?<BR>Its results were as follws:<BR>(a) The frequency of the choice increased 0.75 for each person in the 2nd camp training, in comparison with the 1st camp training. The results may be interpretated in this way that the camp training had a good influence on the development of the human relations in team activities.<BR>(b) Those who had the feeling of inferiority enjoyed a very little popularity.<BR>(5) The 3rd Experiment.<BR>A study of res lying the conflicts between the academic studies and team activities.<BR>(1) By the results of the pre-test, it was found that all members felt, more or less, conflicts, between academic studies and team activities.<BR>(2) Introducing the persuasion as a means of resolving the conflicts.<BR>The content of persuasion was as follows;<BR>At the 1st step, the President of baseball club announced at the presence of all members of baseball team to the effect that: Even if there are some negative aspects in baseball team activities at present time, the experience of club activities will be very much helpful in the light of the whole life experiences,
著者
三隅 二不二 中野 繁喜
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.10-22, 1960

本研究は, アメリカにおけるレヴィーン, リピット, ホワイトによる, いわゆる "専制的" , "民主的" , "放任" 指導法に関する諸研究の成果を, 社会-歴史的背景を異にする日本において, 更に検証しようとしたものである。<BR>被験者として福岡市高宮小学校5年生の男子30名 (年令10-11才) を用いて等質集団6組を編成し, 課題として福岡県の模型地図作成をえらんだ。本報告の結果を要約すれば, 次の如くである。A. 仕事に対する熱心さ<BR>(1) 指導法の変更前においては, 専制的指導者の下で最高であったが, 変更後においては (特に変更後の最終日においては) 民主的指導者の下の方が最高となった。平均値としては専制的集団が最も熱心であった。<BR>(2) 自由放任的指導者の下では, 他の二集団に比較して仕事に対する熱心度は最低であった。<BR>(3) 民主的指導タイプの集団では, 仕事に対する熱心度は上昇傾向が著しく, 最終日には最高となった。<BR>(4) 指導タイプ変更後, 最も著しい下降を示したのは, 専制的指導から自由放任的指導へ変更されたときであった。<BR>B. 攻撃的反応の頻度に関しては, 専制型に移行した場合は, いづれの場合も減少した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 民主型からの移行の場合は減少し, 専制型からの場合は増大した。<BR>C. 友好的発言の頻数に関しては, 専制型に移行した場合は, 民主型からの場合は減少し, 自由放任型からの場合は増大した。民主型に移行した場合は, いづれの場合も著しく増大した。自由放任型に移行した場合は, 専制型から移行した場合は著しく増大し, 民主型からの移行の場合は変更前と差異がなかった。<BR>D. 課題解決を遂行途中, 指導者が不在になった時の, 各集団成員が示した反応塚数の変化について<BR>(1) 攻撃的専制集団の場合は, リーダー不在時に, 不平不満や注目をひく発言が増大し, 集団中心的発言や知識を求めたり与えたりする発言, 仕事中心の発言が減少し, 一方仕事外の発言が増大している。<BR>(2) 服従的専制集団の場合は, 友好的な快活的な発言が増大した。<BR>(3) 民主的集団の場合は, リーダー不在によって, 同僚依存や攻撃性が著しく増大し, また, 注目をひく発言, 集団中心的発言, 知識を求める, 与える発言が増大した。一方, 仕事外会話が減少した。<BR>(4) 自由放任的集団の場合は, 不平不満が著しく増大したが, その他では著しい変化はあらわれなかった。
著者
三隅 二不二 篠原 弘章 杉万 俊夫
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.77-98, 1977
被引用文献数
4

本研究は, 地方官公庁における管理・監督者のリーダーシップに関して, 客観的測定方式を作成し, その妥当性を検討しようとするものである。<BR>まず, 基礎資料として, 地方官公庁の管理・監督者から, 自由記述によって, 彼らの職場における上司としての役割行動についての行動記述を収集した。この基礎資料をもとに質問項目を作成し, 数回にわたる専門家会議を経て, 調査票を作成した。質問項目はすべて, 部下である一般職員が上司のリーダーシップ行動について回答するという, 部下評価の形式をとった。また, 係長と課長のリーダーシップ行動を各々区別して評定するように調査票を作成した。係長のリーダーシップ行動に関する質問項目は49項目であり, 課長のリーダーシップ行動に関する項目は, 係長用49項目に5項目を追加した計54項目である。調査票には, リーダーシップ得点の妥当性を吟味するための資料として, モチベーター・モラール, ハイジーン・モラール, チーム・ワーク, 会合評価, コミュニケーション, メンタル・ハイジーン, 業績規範に関する質問項目40項目 (モラール等項目) を含めた。なお, 調査票の質問項目はすべて, 5段階の評定尺度項目である。<BR>この調査票を用いて, 集合調査方式により調査を実施した。調査対象は, 栃木県, 東京都, 静岡県, 兵庫県, 北九州市, 福岡市, 久留米市, 都城市の自治体に勤務している一般職員967名である。<BR>分析は, 単純集計に引続いて, 因子分析を行なった。因子分析は次の3つに分けて行なった。すなわち, (1) 係長のリーダーシップに関する49項目, (2) 課長のリーダーシップに関する54項目, (3) モラール等項目40項目, に対する因子分析である。因子分析にあたっては, 相関行列の主対角要素に1.00を用いて, 主軸法によって因子を抽出した後, ノーマル・バリマックス法によって因子軸の回転を行なった。<BR>係長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 次の4因子が見出された。すなわち, 「集団維持の因子」・「実行計画の因子」・「規律指導の因子」・「自己規律の因子」の4因子である。「集団維持の因子」は, 集団維持のリーダーシップ行動 (M行動) に関する因子であり, 「実行計画の因子」・「規律指導の因子」・「自己規律の因子」の3因子は, 集団目標達成のリーダーシップ行動 (P行動) に関する因子であると考えられた。<BR>課長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 次の4因子が見出された。すなわち, 「集団維持の因子」・「企画・調整の因子」・「規律指導および実行計画の因子」・「自己規律の因子」の4因子である。「集団維持の因子」はM行動に関する因子であり, 他の3因子はP行動に関する因子であると考えられた。<BR>係長と課長のリーダーシップ行動に関する因子分析の結果, 産業企業体でみられた「目標達成への圧力の因子」に相当する因子が見出されず, それに代わって, 規律指導あるいは自己規律の因子のような規律に関する因子が見出されたことは, 地方官公庁におけるリーダーシップ行動の特質と考察された。<BR>また, モラール等項目に関する因子分析では, 予め設定した7カテゴリーの妥当性を検証するために8因子解を求めたが, 全般的に, 予め設定した各カテゴリーは, 各因子と1対1の対応をもつことが明らかになった。ただ, メンタル・ハイジーンと業績規範の2カテゴリーは, それぞれ2因子, 3因子構造を有していた。<BR>係長および課長を部下評定によって分類したリーダーシップP-M4類型の効果について分析した。まず, 係長および課長のリーダーシップ・タイプを測定する項目を因子分析の結果に基づいて選定した。係長の場合も, 課長の場合も, P行動測定項目, M行動測定項目をそれぞれ8項目ずつ選定した。<BR>係長のP-M指導類型とモラール等項目得点の関係をみると, 業績規範のカテゴリーを除く各カテゴリーにおいて, PM型が最高点を示し, M型が第2位, P型が第3位, pm型が最下位の平均値を示した。業績規範のカテゴリーにおいては, M型とP型の順位が逆転した。この傾向は, 三隅他 (1970) が産業企業体の第一線監督者において見出したリーダーシップP-M類型効果差の順位と同じである。また, 相関比の2乗の大きさから, コミュニケーション・会合評価の2カテゴリーにおいて, 特にリーダーシップ類型効果差が著しいことが明らかとなり, これは, 行政体における特徴であると考察された。
著者
三隅 二不二 関 文恭 篠原 弘章
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-191, 1969-03-15 (Released:2010-03-15)
参考文献数
23

本研究は, 討議集団におけるPM機能を, 集団成員による, 他者評定にもとづいて, 評定尺度の項目作成を試みた。第1研究から第4研究までの一連の因子分析による尺度項目の検討を行なった。その結果, 本研究で用いた評定尺度項目は, 討議におする2つの次元, すなわち討議の目標達成次元 (P次元) と討議の過程維持次元 (M次元) を測定していることが明確にされた。本研究で用いた討議集団のPM評定尺度にBurk (1967) の研究結果を加えると, P次元の項目には17項目, M次元の項目には14項目が含まるものとして考察された。
著者
宮本 正一 小川 暢也 三隅 二不二
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.99-104, 1973-12-30 (Released:2010-11-26)
参考文献数
16

本研究は回避反応の習得と消去におよぼす社会的条件刺激の有効性を実証するために行なわれた. 社会的条件刺激はグリッド越しのとなりの部屋で他のラットに電気ショックを与えることにより作り出された, 恐怖反応である. 従来の手続きによるBuzzer群と比較した結果, 次のことが明らかになった.1. 習得基準までの試行数, その間の回避反応数の2測度には2群間の差がみられず, 反応潜時だけはSocial群がBuzzer群より短い傾向が認められた.2. 消去に関しては, 基準までの試行数, CR数, 反応潜時の3測度でいずれにも2群間に顕著な差が認められ, Social群の消去抵抗がBuzzer群より著しく大きかった.これらの結果は代理経験と社会的刺激のもつ複雑性の2つの観点から考察された.
著者
関 文恭 吉山 尚裕 三隅 二不二 吉田 道雄 三角 恵美子 〓 惠晶
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.25-32, 1997-03

本研究では, 看護専門学校におけるクラス担当教員のリーダーシップPM行動測定尺度を作成し, その妥当性を検討した。調査の回答者となった看護学生数は2277人。リーダーシップ行動項目に関して抽出された4つの因子, 「学習・生活面での厳格性」「社会性育成」「学生に対する配慮」「学習への配慮と工夫」から, P, M各10項目ずつのPMリーダーシップ行動尺度を作成。外的基準変数としての看護学生のモラール(クラスヘの帰属意識, クラスの運営満足, 学校満足, 授業満足, 学習への内発的意欲, 学生生活における規律遵守, 学校生活におけるストレスの因子)との関係を検討した。その結果, PM4類型の効果性順位については, ストレスを除く6つの要因についてPM>M>P>pmの順となり, 本研究で作成した看護教員のリーダーシップ尺度は一定の妥当性を有するものと考察された。
著者
関 文恭 吉田 道雄 篠原 しのぶ 吉山 尚裕 三角 恵美子 三隅 二不二
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-10, 1999-03

本研究は, MOW国際比較研究の一環として, 日本・台湾・中国・オーストラリア・デンマークの大学生の"働くこと"に対する意識・態度を比較したものである。調査対象者は, 各国の大学生1678人であった。主要な結果は, 次の通りであった。(1)日本の学生の「仕事中心性」は, 5カ国の中で低いはうであり, 最も高かったのは中国の学生であった。また, 日本の学生がレジャーを最も重要と考えている点は, 他国の学生と比べて大きな特徴である。(2)働くことに対して, 中国の学生は, 日本の学生とは違ったイメージを抱いている。すなわち中国の学生は, 働くことを社会貢献として捉えているのに対し, 日本の学生は, 自己に課せられた仕事として把握している。(3)中国や台湾の学生は, "働くことは義務であり, 人は働いて社会に貢献すへき"という義務規範を強く支持している。一方, 日本の学生は, 権利規範を支持する度合いが強く, 職場の確保や教育・訓練は, 社会や雇用者側によってなされるべきであると考えている。(4)いずれの国の学生も, 働くことから得られるものとして, 「必要な収入」や「興味・満足感」に高い価値を与えている。中国の学生は, 他の4カ国の学生よりも「社会貢献の手段」として価値づけている。(5)仕事と余暇の関係について, 日本では, "余暇のための仕事"と考える学生の割合が, "仕事のための余暇"と考える学生の割合を上回っている。また, "趣味に合った暮らし"を望む学生の割合か, 他の4カ国よりも高い。(6)職業選択の基準として, 日本・台湾・中国では"適性"を重視する学生か多い。日本の学生は"やり甲斐"を重視する者も多いが, 仕事(職業)に対して, 明確な目標や期待を持っている学生は少ない。本研究の結果から, とくに日本と中国の学生の間で, "働くこと"に対する意識に対照的な違いが見いだされた。今後は, 両国の学生の意識の構造について分析を進めていく必要があろう。
著者
釘原 直樹 三隅 二不二 佐藤 静一
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.55-67, 1980
被引用文献数
1 2

本研究は新しく考案された装置を用いることによって集団の大きさが模擬被災状況における避難行動, 即ち, 脱出成功率や混雑発生の度合, 脱出や攻撃, 譲歩反応の生起, 競合過程に及ぼす効果について実験的に検討したものである.<BR>被験者は制限時間内に, 電気ショックがくるという危機的場面から脱出しなければならない状況におかれた. 但し, 脱出口は1つしかなく, しかも複数の人間が同時に通り抜けることはできないように実験事態が設定されていた. そのうえ, 1人が20秒 (脱出ボタン100回の打叩時間) 近くも脱出口を占拠する必要があった. 混雑が生じた際には, 被験者は攻撃か譲歩かまたは全然反応せず他者の反応を待つという3つの解決方法を執ることができた. 実験は暗室でおこなわれ, 聴覚はwhite noiseで他の音から遮断されていた.<BR>本実験の条件下において次の結果が見出された.<BR>1. 集団の大きさの変化にかかわらず, 1人当りの脱出許容時間を一定にした条件下で, 集団の大きさが増大すれば, それにともなって混雑が大きくなる. そして, 脱出率は低下する. 特に, 4人集団と5人集団の間の脱出率の低下が顕著であった.<BR>2. 集団サイズが大きい場合, 即ち, 7人, 9人の場合や小さい場合, 即ち, 3人, 4人の場合より, その中間の6人の場合に, 最も競争的反応がみられた. それは不安定な報酬構造という観点から解釈された.<BR>3. 時間経過に伴って攻撃反応が増大し, 譲歩反応が減少するような状況は全員脱出に失敗することが明らかになった.
著者
三隅 二不二 杉万 俊夫 窪田 由紀 亀石 圭志
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-14, 1979
被引用文献数
1

本研究は, 企業組織体における中間管理者のリーダーシップ行動を実証的に検討し, その測定尺度を構成することを目的とするものである。<BR>フィールドは, 自動車部品の製造, 販売を主要な業務とする企業体であった。まず, 中間管理者 (部長, 工場長, 課長) に, 管理・監督行動に関する自由記述を求め, それを分類・整理しながら, リーダーシップ行動を測定するための質問項目を作成した。質問項目作成の過程で, 質問項目検討のための専門家会議を数回にわたってひらき, 中間管理者のリーダーシップ行動が質問項目として網羅的に含まれることを期した。最終的に, (1) 部 (次) 長・工場長用49項目, (2) 事務・技術系課長用92項目, (3) 工場課長用85項目の質問項目を作成した。リーダーシップ行動測定項目はすべて部下が上司のリーダーシップ行動を評価する, 部下評価の形式にした。これに, リーダーシップ測定項目の妥当性を吟味するための外的基準変数を測定する16項目を加えて質問票を印刷した、外的基準変数は, 仕事に対する意欲, 給与に対する満足度, 会社に対する満足度, チーム・ワーク, 集団会合, コミュニケーション, 精神衛生, 業績規範の8変数である。<BR>回答者数は, 部 (次) 長・工場長用533名, 事務・技術系課長用1, 040名, 工場課長用273名であった。リーダーシップ行動測定項目に関して因子分析を行なったが部 (次) 長・工場長, 事務・技術系課長, 工場課長, いずれの場合も, 「P行動の因子」と「M行動の因子」が見出された。<BR>次に, P行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 「P行動の因子」で. 60以上, かつ「M行動の因子」で. 40未満の因子負荷量を持つ項目のみを対象とする因子分析を行なった。その結果, (1) 部 (次) 長・工場長の場合は, 「計画性と計画遂行の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (2) 事務・技術系課長の場合は, 「計画性の因子」, 「率先性の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」, (3) 工場課長の場合は, 「計画性の因子」, 「内部調整の因子」, 「垂範性の因子」, 「厳格性の因子」が見出された。<BR>M行動のさらに詳細な構造を明らかにするために, 同様の分析を行なつた。<BR>その結果, (1) 部 (次) 長の場合は, 「独善性の因子」 と「公平性の因子」, (2) 事務・技術系課長, 及び (3) 工場課長の場合は, 「独善性の因子」と「配慮の因子」が各々見出された。<BR>従来の研究との比較によって, 第一線監督者と中間管理者のリーダーシップ行動の差異が考察された。すなわち, 具体的な内容には若干の違いがあるものの, 「厳格性の因子」及び「計画性の因子」は第一線監督者と中間管理者に共通している。しかし, 部 (次) 長・工場長及び事務・技術系課長の場合に見出された「率先性の因子」と, 工場課長の場合に見出された「内部調整の因子」は, 第一線監督者を対象とした従来の研究では見出されてはおらず, 中間管理者に特有な因子であると考察された。<BR>P行動, M行動の因子得点を用いてリーダーをPM型P型, M型, pm型に類型化し, 8個の外的基準変数との関連においてリーダーシップPM類型の妥当性を検討したが, いずれの外的基準変数においても, PM型のリーダーの下で最も高い得点, pm型のリーダーの下で最も低い得点が見出され, PM類型の妥当性が実証された。このPM類型の効果性の順位は, 従来の研究における第一線監督者の場合と全く同様であった。<BR>また, P行動測定項目10項目, M行動測定項目10項目を選定した。10項目を単純加算して得られるP (M) 行動得点はP (M) 行動の因子得点と. 9以上の相関を示すこと, PM行動得点を用いてリーダーの類型化を行なった場合のPM類型と外的基準変数の関係が因子得点を用いて類型化を行なつた場合の関係と同じであったことからこれらPM行動測定項目の妥当性が明らかになった。