- 著者
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小高 信彦
澤志 泰正
- 出版者
- 公益財団法人 山階鳥類研究所
- 雑誌
- 山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.134-143, 2004
- 被引用文献数
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8
1998年6月から2003年6月までの5年間に,ヤンバルクイナ<i>Gallirallus okinawae</i>の死亡個体(22件)と緊急保護個体(1件)の情報が集められた。死亡個体の情報22件のうち16件(72.7%)は自動車による交通事故が直接の死亡要因であると推察され,交通事故はヤンバルクイナの重大な死亡要因であることが明らかとなった。交通事故による死亡個体(16件)と緊急保護個体(1件)を合わせた計17件について,その発生場所と時期の特徴について分析を行った。発生場所については,国頭村内を通る県道70号線と県道2号線にヤンバルクイナの交通事故が頻繁に発生する地域がそれぞれ1ヵ所ずつ認められた。両地域は共に,ヤンバルクイナの生息地内を通る路線の中でも,自動車の走行速度が高くなると推察される場所であった。無飛翔性のヤンバルクイナにとって,生息地内を通過する車両の速度が高くなることは,直接的に交通事故件数の増加につながる。交通事故の発生時期については顕著な季節変化が見られ,5月と6月に11件(64.7%)の交通事故が集中して発生していた。この時期はヤンバルクイナの繁殖期と重なっている。