- 著者
-
澤志 泰正
西田 睦
- 出版者
- 日本魚類学会
- 雑誌
- 魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.3, pp.253-260, 1994-11-21 (Released:2010-06-28)
- 参考文献数
- 14
現在の唯一の生息地である奄美大島において, リュウキュウアユは不連続な東西2地域 (住用・伊須湾域と焼内湾域) に分布する.この両地域の集団がどの程度独立であるかを明らかにするため, 生態学的側面および遺伝学的側面の両面から検討を試みた.まず, 遡上期における稚魚の分布を全島的に調査したところ, 東西2地域では従来通り本亜種の生息が確認できたが, それらを隔てる南部や北部地域の河川では本亜種は全く出現せず, 沿岸海域を通じての東西間の仔稚魚の移動の証拠は得られなかった.次に, 両地域の集団から得た標本にっいて電気泳動分析を行ったところ, 調べた28遺伝子座のうち多型的な2遺伝子座で, 遺伝子頻度の顕著な差異 (それぞれp<0.001) が認められた.以上の結果は, 東西両集団は, 相互の間でほとんど交流のない, 相対的に独立したものであることを示唆する.本亜種の保護を考える際には, こうした奄美大島における遺伝的多様性を慎重に考慮することが重要であると考えられた.