著者
竹内 淳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.665-679, 1966

戦後,北九州工業地域の国内的地位の低下の実態と要因を明らかにした.<br> 1. 全地域生産額の75%を占める八幡製鉄など臨海部重化学工業の停滞は筑豊炭の重要性の減少,大陸貿易の中止などによって有利性を失っている上に,巨大な固定設備を要するこれらの工業の新規投資が市場条件などにより他地域に行なわれているためである.<br> 2. 三大工業地帯では生産の中心となっている機械工業部門が,当地域では筑豊炭田・八幡製鉄・小倉兵廠などの発展条件を有しながら4部門合せて11%と全く低調である.これは親企業の自己完結的生産体系によって素材加工部門や部品生産のための下請,再下請群などの生産体系が養成されていなかったためである.今日,耐久消費財部門の成長が全くみられないのもここに原因がある.<br> 3. 日用消費財部門が全く欠如している.これは, (1)八幡製鉄の消費財充足形態が成立の事情などから地元に消費財部門を養成しなかったこと, (2)八幡製鉄が諸雑作業のために,日用消費財生産を支えるべき多くの低位労働力を吸収してしまっていること,および, (3)臨海工場によって埠頭が占拠される結果,雑貨取扱を不振とし,ライナーポート化を困難にするため,港依存の雑貨工業の発達が抑圧されたこと,などによるものである.<br> 4. 北九州の停滞はわが国臨海型重化学工業地域の発展の限界を示す最初の事例と考える.

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