- 著者
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呂 耀卿
- 出版者
- 日本医真菌学会
- 雑誌
- 日本医真菌学会雑誌 (ISSN:09164804)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.3, pp.179-185, 1990
- 被引用文献数
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発達した医療体制の下で,人々の寿命は延び,糖尿病・自己免疫病なども上手に管理されて,高年者を含む免疫力低下あるいは不全の人口が殖えつつある.従って真菌症を含めての感染症は減らず,稀な菌種による感染さえ見るようになった.この趨勢は台湾にも見られ,ここ三年間の数多い症例の中から,皮膚病変を伴う珍らしいと思われる9例を紹介する.全例とも皮膚科医の報告したものである.Penicilliosis marneffei; cutaneous protothecosis; phaeohyphomycosis: Exophiala jeanselmei 2例,Alternaria sp.1例;congenital cutaneous candidiasis; cutaneous fusariosis; cutaneous aspergillosis; pemphigus foliaceus with cryptococcemiaであり,それぞれの病歴・現症・臨床検査的及び病理組織学的所見・菌学的検査結果・治療及び経過を説明し,特にそれぞれの推察され得る免疫学的背景を可及的に探索した.菌学的に興味のあるのはPenicilliosisとProtothecosisで,殊にdimorphismのある<i>Penicillium marneffei</i>は報告例が30例足らずで,主に東南亜からである.<br>発病の基礎的原因としては糖尿病・紅斑性狼瘡・天疱瘡あるいはステロイドの長期使用が主であるが,単に高年あるいは幼弱で免疫力が弱いと考えられるのもある.<br>治療はそれぞれ異なった薬や方法を用いているが,面白いことに全例成功しており,これが諸家の参考になれば幸いである.