- 著者
-
森田 美佐
長嶋 俊介
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.8, pp.497-502, 2005
従来の男女平等アプローチでは, 平等の結果が労働者個人やその家族・家庭生活にもたらす影響について, 十分な議論がなされていない.本研究の目的は, 男女平等アプローチに個人・家族成員の福祉(well-being)を保障する視点から, 日本の雇用労働者の実質的男女平等に向けた理論展開を試みることである.本研究は, 厚生経済学のケイパビリティ(潜在能力)アプローチを生活経営の視点から検討した.その結果, 「人間(Human)」を「3側面の存在(再生産的・生産的・文化的存在)」, 「ライフ(Life)」を「生命・暮らし・人生」の側面から捉え, 3Life(生命・暮らし・人生)をもつ人間の「キャリア」を「ライフ・キャリア」と定義した.そして「ライフ・キャリア」を平等指標とした.この指標は「3つの人間発達」の質向上と換言できる.この平等指標に向けて, 本研究ではCo-governanceの構築を提言した.Co-governanceとは, 営利企業と労働者・家族の対等な関係性(Partnership)の構築に向けた, 企業と非営利企業(労働組合, NGO, NPO, ボランティア団体等)との連携(Membership), 企業と国家との連携(Citizenship)を指す.Co-governanceの実践は, 営利企業を, 一般社会に開かれた, 社会的責任を果たす主体として存在させ, 企業と労働者および家族との対等性, 労働者と家族・家庭生活の質の保障に貢献する可能性をもつ.