著者
三隅 二不二 黒川 正流
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.169-181, 1971

本研究は, 「集団規模の拡大は群集化傾向と軍隊化傾向を生じる」という仮説を, リーダーシップPM論との関連において実証し, あわせて集団規模と帰属意識およびモラールとの関係を分析することを目的とした。<BR>某製鉄所一般工員4, 418名 (698集団) および某化学工場一般従業員1, 369名 (305集団) に対して, 質問紙による面接調査を実施した。<BR>結果を要約すればつぎの通りである。<BR>(1) リーダーシップM機能についていえば, 職場集団規模の拡大につれて, 一般にM機能の強いPM型もしくはM型の第1線監督者が減少し, M機能の弱いP型もしくはpm型の第1線監督者が増加する傾向が認められた。<BR>(2) リーダーシップP機能についていえば, 強いM機能が伴わないならば, 職場集団規模の拡大につれて, 一般にリーダーシップPおよびPが増加し, あるいは少なくとも減少することはないことが実証された。<BR>(3) 以上の結果から, 職場集団規模の拡大につれて, 軍隊化傾向か, あるいは群集化傾向が生じることが考察された。<BR>(4) 会社もしくは組合, およびその両方に対して高い帰属意識得点を示すものの比率は, 上司のリーダーシップ類型をPM型と認知する成員の中で最も高く, 以下M型, P型, pm型と認知する成員の順にその比率が低下し, 会社もしくは組合, およびその両方に対して低い帰属意識得点を示すものの割合は, 上司をpm型と認知する成員の中で最も高く, 以下P型, M型, PM型と認知する成員の順にその比率が低下することが見出された。<BR>(5) 上記 (4) の結果にもかかわらず, 職場集団規模の大いさは, 会社と組合, およびその両方に対する成員の帰属意識の強さに有意な影響を与えるという証拠は見出されなかった。<BR>(6) 上記 (4), (5) の結果から, 職場集団規模の拡大が会社と組合に対する帰属意識を相対的に高める傾向をもつという仮説が暗示された。<BR>(7) 職場集団規模の拡大につれて, 一般にモラール (チームワーク得点を含む) が低下する傾向が認められた。このことは, リーダーシップの変化による軍隊化傾向および群集化傾向のいずれも, いわゆる職場のモラールを犠牲にして成立することを裏付けるものと解釈された。

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