著者
千葉 晃 本間 義治
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.287-294, 1981

日本海側の新潟海岸へ多数漂着するハリセンボンの新鮮標本8尾を用い, 各種器官を組織学的に観察した.いずれも軽い飢餓状態にあったが, 消化器官, 膵外分泌組織, 腎臓, 脾臓には異常は認められなかった.しかし, 肝臓への脂肪蓄積が著しく, 胸腺は退行状態にあり, ブロックマン小体にはグルカゴン産生細胞が優勢で, 甲状腺は機能低下状態を示した.一方, 間腎腺とスタニゥス小体は正常と目された.卵巣は卵黄形成前の若い卵母細胞によって占められていたが, 精巣の大部分は精原細胞よりなるものの, ごく少数の精子もみられた.視床下部神経葉には相当量の神経分泌物が検出されたが, 腺性下垂体の生殖腺刺激細胞はまだ小さく, 染色性に乏しかった.冬季に対馬暖流によって日本海の高緯度地域まで運ばれるハリセンボンは, 前報 (Chibaetal., 1976) したアミモンガラ同様に未熟の若魚で, 死滅回遊の過程にあると思われるもので, ほぼ同様の組織像を示していた.

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