- 著者
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山口 寿
高橋 精一郎
甲斐 悟
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.A3P2140, 2009
【目的】運動としての歩行は安全性や利便性から運動処方に多く利用されている.歩行は屋内や屋外など様々な環境で行われることが多い.歩行に関する呼吸循環反応の研究は多く行われているが,屋内外での歩行環境の違いによる変化やその相違を検討した研究は少ない.今回,屋内および屋外平地歩行においての呼吸循環反応の変化や相違を比較分析することで,今後の運動処方,指導に資することを目的とした.<BR>【方法】対象者は研究内容を説明し,本研究参加に同意を得た健常男性14名(平均年齢21.9±3.8歳)とした.測定は平地歩行の可能な屋内と,屋外では市街地および運動公園の3つの条件とし,屋内は1周60mのトラックを作成し周回させた.屋外は平地歩行の可能な市街地とウォーキングコースのある運動公園とした.歩行様式は自由歩行,歩行速度は時速6kmとし中等度の運動強度に設定した.測定項目は心拍数,酸素摂取量,代謝当量(以下METs)ならびに自覚的運動強度(以下RPE)とし,測定機器は呼吸代謝測定装置VO2000(Medical Graphics社製)を用いた.心拍数と酸素摂取量は安静時と運動開始から20分間を測定し,運動終了時にRPEを聴取した.統計学的処理にはDr.SPSS IIfor Windowsを用いた.各条件の心拍数,酸素摂取量,METsの実測値と変化率の比較には一元配置分散分析を行った.RPEの比較にはボンフェローニの不等式による多重比較を行った.有意水準は5%未満とした. <BR>【結果】3つの条件における生理的反応である心拍数,酸素摂取量, METsは,実測値の経時的変化と安静時を基準値とした変化率のいずれにも統計学的な有意差は認められなかった.主観的反応ついては各条件でのRPEは屋内,市街地,運動公園の順に有意に高かった.<BR>【考察】同一速度,歩行様式の運動負荷で,気温もほぼ同じであれば,運動処方において屋内と屋外で運動処方を変更せずに用いても,生理的反応に影響は少ないことが示唆された.主観的反応であるRPEに相違がみられたのは,屋内と屋外の環境の違いが関与したと推測される.運動公園では他の2条件の環境に比較し,生理的反応と主観的反応との一致が高く屋内では差がみられた.運動公園には樹木や植物も多く,他の環境に比較し心理的にリラックスできる環境であり,それに比べ屋内は周回コースで,景観の変化もなく繰り返しであったことが,主観的に負荷を強く感じたと推測される.RPEを用いての運動処方では屋内外の環境が,対象者に与える影響を考慮する必要性が示唆される.今回の研究はRPEに関連してくる心理的因子についての詳細な解明には至っていない.また対象者は健常成人であり,呼吸循環反応は年代や性別などに影響を受けやすいものであるため,これらについての詳細研究が今後の課題と考える.