著者
松永 秀俊 上田 周平 藤縄 理 安田 大典 武田 功
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101290-48101290, 2013

【はじめに、目的】多くの養成校においてアドミッションズ・オフィス(以下AO)入試が採用されている。AO入試は学生の個性や学ぶ意欲をアピール出来る反面、成績の低下が心配されている。また、進級が出来ない学生の中にAO入試での入学者の割合が多く占める様になり懸念されるところであるが、AO入学に関する論文は散見する程度であり、今後、入試形態を考慮する材料になることを期待し、今回、調査を行った。【方法】対象は平成21年4月に理学療法学科に入学した学生51名(男性31名,女性20名)(平均年齢18.1±0.4歳)とした。ただし、不安検査のみは正確性を高める目的で信頼性に問題のある無応答が10個以上ある者と妥当性に疑いのある嘘構点が11点以上の者の計2名は除外した。その結果、不安検査は対象者49名(男性30名,女性19名)(平均年齢18.1±0.4歳)を対象とした。 方法は対象者全員に対し、入学式後、前期講義開始前に行われたオリエンテーション終了後にManifest Anxiety Scale(以下MAS)を用いた不安検査とアンケートを行った。アンケートの内容は大学入学試験での初回受験日、年齢、性別、実家またはアパート・下宿等・その他からの通学かを尋ね、さらに実家と大学間の距離を確認するために実家に最も近い駅名(JR,私鉄,地下鉄)を所在県名とともに記載させた。さらに、入学後4年目に最終学年への進級が出来たか、または、進路変更・休学・留年等で出来なかったかを調査した。これらを基にAO入試での入学学生(以下、AO群)とそれ以外での入学学生(以下、一般群)間での比較・検討を行った。 統計処理は性別・通学方法・進級の可否の比較にはカイ二乗検定、年齢・実家からの距離にはマンホイットニーの検定、MASの比較には対応のないT検定を用い、危険率5%未満を有意確立とした。【倫理的配慮、説明と同意】調査に当たっては対象者全員に口頭でその主旨を伝え,協力の意志の有無を確認した。【結果】AO群は男性7名、女性3名、実家から通学している者6名、アパート・下宿等から通学している者4名、実家からの距離57.6±64.0km、年齢18.0±0.0歳、進路変更等なし4名、進路変更等あり6名、MASの点数18.6±5.3であった。AO群にはMASの不適格者がいなかったため、MAS対象者も全て同数であった。一般群は男性24名(MASの対象者は23名)、女性17名(MASの対象者は16名)、実家から通学している者22名(MASの対象者は20名)、アパート・下宿等から通学している者19名(MASの対象者は19名)、実家からの距離121.8±145.2km(MASの対象者は125.8±147.8km)、年齢18.1±0.4歳(MASの対象者は18.2±0.4歳)、進路変更等なし30名(MASの対象者は28名)、進路変更等あり11名(MASの対象者は11名)、MASの点数20.8±7.8であった。一般群にはMASの不適格者2名がいたため、MAS対象者の数値を別に記載した。これらの数値をAO群と一般群間で統計処理した結果、全てに有意差は無かった。【考察】岡本らはAO入学学生のメンタルヘルス問題の実態を把握し、支援の方法を検討した結果、AO入学学生のメンタルヘルス問題に関して、学生担当教員等の助言などのプライマリケアが必要であると同時に、早期からのサポート体制を検討していくことが重要であると述べている。また、八木らは入学者選抜におけるAO方式の有用性を検討した結果、AO方式による選抜が良好な結果をもたらしていることが検証されたと述べている。この様にAO入試による入学者に対する報告には様々な意見があり、その特徴について統一見解を得るための調査・検討は重要であると思われる。ただ、今回の結果から有意差が認められなかったことからAO群の特徴は見出せず、AO群と一般群には差はないと言う結果であった。しかし、対象者数を増やすことで有意差が得られる可能性があるものが認められたため、今後、さらに研究を続ける必要性を感じている。【理学療法学研究としての意義】AO入試を採用している理学療法の養成校は多い。しかし、AO入試は近年導入されたもので、その影響について論じられたものはほとんど無い。今後、入試形態の違いによる学生の特徴を把握し、それを理解した上での学生への対応が必要と考え、研究の継続の必要性を感じている。

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