著者
藤野 英己 祢屋 俊昭 武田 功 菅 弘之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.292-299, 1998-07-31
参考文献数
11
被引用文献数
1

健常成人, 高齢者および唖下障害者の喉頭運動と呼吸運動をストレインゲージ法で同時に記録して, 瞭下と呼吸の相互連関について検討した。唖下反射は3mlの飲水で誘発した。健常成人では喉頭挙上開始から238±32msec(平均士標準誤差)遅延して唖下呼吸の吸息が開始した。喉頭降下開始から165±29msec遅延して唖下呼吸は呼息相に移行した。この相互連関は高齢者においても同様であった。この相互連関が維持されているときには正常な唖下が観察された。したがって, その相互連関がスムーズな瞭下物の移送に必要不可欠であることが示唆された。一方, 唖下障害者では誤唖が誘発された。この時には唖下発生までに潜時が認められたり, 喉頭挙上に先行して唖下呼吸がみられた。これらの結果から, 相互連関の乱れが誤嘆に関与することが示唆され, 本研究に使用した測定法が唖下障害の定量的評価法として有用であると考えられる。
著者
濱 弘道 武田 功 黒木 裕士 角南 昌三 星野 一正 伊藤 一忠 山室 隆夫
出版者
京都大学医療技術短期大学部
雑誌
京都大学医療技術短期大学部紀要 = Annual reports of the College of Medical Technology, Kyoto University (ISSN:02867850)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.8-14, 1984

The purpose of this study was to examine gross anatomy of the suprascapular nerve using 20 cadavers (14 male and 6 female), with special reference to the anomalous branch to the supraspinatus muscle and funicular pattern in the scapular notch. The branch to the supraspinatus muscle did not ramify proximal to the scapular notch, whereas the suprascapular artery passed under the superior transverse scapular ligament in 17.5% of the cadavers. Fourty percent of the scapular notches were type II by the classification of Rengachary. There was no adhesion between the suprascapular nerve and superior transverse scapular ligament which varied in size and toughness; the inferior transverse scapular ligament was, however, thin in 72.5%. Pseudoneuromas found just proximal to the superior transverse scapular ligament had no correlation with supraspinatus and infraspinatus muscle atrophy, which were not remarkable. The branch to the supraspinatus muscle superomedial in the scapular notch were located just below the superior transverse scapular ligament where friction neuritis was said to be occasionally seen. The present findings suggest that infraspinatus muscle atrophy is caused by suprascapular entrapment neuropathy at the spinoglenoid notch rather than at the scapular notch.
著者
松永 秀俊 山野 薫 上田 周平 村田 伸 吉澤 隆志 武田 功
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.675-678, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
16

〔目的〕運動後,伸張強度が筋に与える影響について書かれたものは散見する程度であり,運動療法施行上,核心が無いままで行われているのが現実である。そこで,我々は筋伸張強度と筋の回復効果との関連について検討した。〔方法〕運動負荷後,異なった強度での伸張運動を行い,時間の経過と共に筋硬度および体表温度の変化を計測し,それを基に効果判定を行った。〔結果〕筋伸張強度の違いによる筋の回復効果には一部有意な差を認めた。〔結語〕運動負荷後の筋の回復には強い伸張で行う必要はなく,軽い伸張でも十分効果的である可能性が示唆された。
著者
坂本 裕規 村上 慎一郎 近藤 浩代 村田 伸 武田 功 藤田 直人 藤野 英己
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1306-Ab1306, 2012

【はじめに、目的】 骨格筋量は30歳を頂点として加齢と共に減少する。また、筋力低下による活動量の減少は生活習慣病発症の危険因子である肥満を助長する。一方、筋力や体型は運動や食事などの環境要因だけでなく遺伝的要因も関与する。運動能力に関する遺伝子は200以上、肥満に関しても127以上の遺伝子の関連が報告されている。これらは筋力やBMI、体脂肪量に関連する。しかし、筋力低下や肥満に関係する遺伝子多型の情報は臨床応用には未だ至っていない。高齢者における遺伝子のこれらの遺伝子多型を解明し、筋力低下や肥満を生じやすい対象を特定できれば、予防的な早期介入が可能になると考える。本研究では高齢者における筋力や体型に関係すると考えられる遺伝子の多型が筋力や体組成に及ぼす影響について検証した。【方法】 対象は地域在住の健常女性164名(72.8±7.08歳)とした。体型や筋力に関係すると考えられる成長ホルモン受容体(GHR)、毛様体神経栄養因子(ZFP91-CNTF)、アクチニン3(ACTN3)、インスリン様成長因子受容体(IGFR-1)に関する遺伝子多型の解析のため口腔粘膜から得た細胞を用い、核DNAを抽出(Gentra Puregene Buccal Cell Kit,QIAGEN)した。TaqmanプローブによるリアルタイムPCR法でアレルの検出を行い、遺伝子多型(SNP)を同定した。筋力と体型を評価するため、握力、膝伸展力、足把持力の等尺性筋力を測定した。さらに、超音波機器を用いて大腿遠位部内側における内側広筋の筋厚を計測した。体組成の測定は、BMI、脂肪量、体脂肪率とした。測定結果の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当該施設における倫理委員会の承諾を得て行った。また対象者には実験の目的と方法を詳細に説明し、同意を得た上で実施した。【結果】 GHRにおけるSNP頻度はAA型20%、AG型50%、GG型30%であった。内側広筋の筋厚では、GG型はAG型に比べて有意に高値を示した。また膝伸展力と足把持力は、GG型がAA型に比べて有意に高値を示した。さらに握力でも同様に、GG型はAA型とAG型に比べて有意に高値を示した。この結果からGHRのGG型においては筋力や筋量が高く、A型アレルを持つ高齢女性は筋力や筋量が有意に低くなることが明らかとなった。次にZFP91-CNTFのSNP頻度はAA型44%、AT型38%、TT型18%であった。足把持力は、AT型はTT型に比べて有意に高値を示した。また脂肪量は、TT型がAA型に比べて有意に高値を示した。同様にBMIと体脂肪率においてもTT型はAA型とAT型に比べて有意に高値を示した。この結果よりTT型のSNPを持つ高齢女性では筋力が低く、肥満傾向が高いことが明らかになった。一方ACTN3とIGFR-1の遺伝子に関しては、各SNP間に有意差を認めなかった。【考察】 健常高齢女性において、GHR遺伝子多型は筋厚と筋力に、ZFP91-CNTF遺伝子多型は筋力と体組成に関与することが明らかになった。GHR遺伝子多型は筋厚と筋力の両方に影響を及ぼしていたことから、GHR遺伝子多型は筋肥大による筋力に関連することが明らかとなった。またZFP91-CNTF遺伝子多型は筋厚には影響を及ぼさなかったことから、ZFP91-CNTF遺伝子多型は神経系が関与する筋力に関係すると示唆された。先行研究ではGH投与によって青年の除脂肪体重が増加するとしている。またCNTF遺伝子多型は成人の筋力に影響を及ぼすとされている。以上のことから、健常高齢女性においてもGHR遺伝子多型は筋量に、ZFP91-CNTF遺伝子多型は筋力に関与すると考えられる。ACTN3遺伝子に関して、持久力を要するスポーツ選手と瞬発力を要するスポーツ選手の間で遺伝子型が異なるとの報告がある。一方、ACTN3遺伝子多型は筋力に影響を及ぼさないとする報告もある。本研究では、高齢女性におけるACTN3遺伝子多型は骨格筋量や筋力に影響を及ぼさなかった。異なるスポーツ特性間では差異を認めるが、地域在住の健常女性のような一般的な対象者では差異を認めなかったため、ACTN3遺伝子はトレーニングへの反応性に影響を及ぼすものと思われる。また本研究ではIGFR-1遺伝子多型は筋力と体組成の両方に影響を及ぼさなかった。先行研究ではIGF-1遺伝子多型が筋力に影響を与えるとされているが、その先行研究では対象が白人と黒人に限定されている。本研究の対象は日本人のみであったため、人種の違いによって異なる研究結果がもたらされた可能性がある。今後は対象集団を拡大することと、理学療法介入の効果を検討することが課題であると考える。【理学療法学研究としての意義】 GHRとZFP91-CNTFの遺伝子多型が高齢女性の筋力や体組成に影響を及ぼす事が明らかになったことから、筋力低下や肥満を生じやすい者を特定し、早期から理学療法士が介入できるようになる可能性が示唆された。
著者
柴田 正貴 向居 彰夫 武田 功 荒 智 相井 孝充
出版者
日本家畜管理研究会(現 日本家畜管理学会)
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.48-57, 1982-08-28 (Released:2017-10-03)
被引用文献数
1

夏期の高温が乳量および乳成分率に及ぼす影響と牛舎冷房の効果を明らかにするために, 延べ20頭の泌乳牛を用いて1974年から3年間にわたり3回の試験を行った。その結果, 次のような知見を得た。1)日中の最高気温が30℃を越える7月後半から8月後半におけて, 放飼群(N群)の体温は39.5℃を, また呼吸数は85回/分を越えた。しかし, 冷房群(A群)では常に体温は38.6℃程度, 呼吸数は40回/分前後であり, 牛舎冷房による効果が認められた。2)体重にあたり乾物摂取量は, 試験IではN群の方が多く, 試験IIでは両群間に著差が認められなかった。N群の摂取量は運動場における測定であるためやや過大に評価される傾向にあったものの, 飼料摂取量に明らかな冷房効果が認められなかったことは, 舎飼いによる長時間の係留・拘束の影響も無視できないものと思われた。3)N群の乳量減少率は, 試験I, IIにおいて7月後半には20%を越え, 9月に至っても回復を示さなかった。6月後半から9月前半の間における減少率では年次間に差が認められたものの, 通常の夏であれば17〜20%を示すことが明らかにされ, また, この時期に泌乳最盛期をむかえるような高乳量のものでは更に大幅な減少を示すことが推察された。4)乳脂率などの乳成分率も6月後半から8月前半にかけて低い値を示す傾向にあり, 特にSNF率では「乳等省令」で定められた規格を下回る値を示しており, 乳成分生産の面でも夏期の高温が悪影響を及ぼしていることが示唆された。5)牛舎冷房によって日中の牛舎内温度を24℃以下に保った場合は, 夏期の高温に起因する乳量減少を防止しうることが明らかになった。
著者
渡辺 浩 落合 浩暢 児玉 栄一 鈴木 修三 武田 功 渡部 則也 小野 重明 海瀬 俊治 西間木 友衛 粕川 禮司
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.385-390, 1992-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例は37歳の女性. 1986年11月日光過敏,蝶形紅斑,抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性から全身面エリテマトーデスと診断され, prednisolone投与を受けた。1989年10月から両下肢脱力感出現し精査加療目的に同年12月当科入院した.抗核抗体2,560倍,抗cardiolipin抗体陽性で,頭部CT上多発性脳梗塞が認められ, PSL 40mg/日の投与を開始した.症状改善傾向にあるも患者は服薬を中止し, 1990年4月退院した.同年5月,両下肢の対麻痺,胸椎11番以下の全知覚障害と膀胱直腸障害が出現し再入院した. aCLは高力価であり,抗リン脂質抗体が強く関与した横断性脊髄障害を合併したものと考え,血漿交換療法,副腎皮質ステロイド剤パルス療法,大量γ-globulin療法,免疫抑制剤投与を行い, aCL価は低下したが,神経症状はほとんど改善しなかった.早期の治療が横断性脊髄障害の諸症状の改善に重要である.
著者
大西 智也 橘 浩久 武田 功
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】国家試験に向けた学生指導について,過去に出題された国家試験問題(以下,過去問)を分析し,その傾向を知り,過去問を何回も見直しながら知識の習熟を図らせる。過去問を繰り返し学習していると,解答が自然と覚えられる。過去問を模擬試験として活用しずらく,学習の成果,その時々の実力を把握しずらい。その対策として,業者の模擬試験問題の活用,過去問が利用された簡易的な模擬試験問題(Webサイト)の活用などがある。そのようなことを,本学で導入しているGoogle for Education™上で実施できる可能性がある。そのシステムを開発するはじめの段階として,過去問を基にした問題集出力を自動化する独自のプログラムの作成を試みた。【方法】方法(1):国家試験問題の編集について,第40~50回の理学療法士国家試験過去問題の3095題(五択問題)を,1題ずつ,1.分野,2.設問,3.図の有無,4.解答選択肢1つ目,5.解答選択肢2つ目,6.解答選択肢3つ目,7.解答選択肢4つ目,8.解答選択肢5つ目,9.ID(任意)をカンマで区切った。1について,専門分野の理学療法評価,臨床運動学,中枢性疾患,などの13分野,基礎分野を解剖学,生理学,運動学,内科学,など11分野,計24分野に任意で分類した。3について,設問や解答に図がある場合,別ファイルに図を保存した。2および4~8について,設問および解答のとおり保存した。1~8を一組にして,9のIDを与え,CSV形式でコンピューターに保存した。方法(2):新たに作成したい問題の指定について,24分野ごとに出力したい問題数をそれぞれ指定したデータ(CSV形式)で保存した。そして,方法(2)で指定した分野別の問題数をもとに,方法(1)で作成したファイルから分野ごとにランダムに問題を抜粋し,次に,抜粋したすべての問題の解答選択肢順を自動で並べ替えて,問題とその解答を別々にコンピューターに保存(CSV形式)させる,という自動化したプログラム(オブジェクト指向)をPython 3.4.3で作成した。そのプログラムに指定しなければならないコマンドは,方法(1)で作成した過去問のデータファイル名と,方法(2)で作成した分野別に指定した問題数が保存されたデータファイル名,実行コマンドとした。【結果】過去問データから,指定した分野別の問題数をもとに,解答選択肢がランダンムに並べ替えられた状態で新たな問題とその解答が自動的に出力され,それをコンピューターに保存することができた。【結論】今回作成したプログラムで,自動的に再編集した過去問を出力させることができた。各々の学生が,必要に応じて,簡単に過去問から模擬的な試験問題を作成できる状態となった(現在は学生の要望に応じて著者が作成)。Google for Education™に,今回作成した独自のプログラムが組み込まれるように,また,国家試験対策の一環として学生が自由に使用できるようにすることが今後の検討課題である。
著者
濱 弘道 武田 功 黒木 裕士 角南 昌三 星野 一正 伊藤 一忠 山室 隆夫
出版者
京都大学医療技術短期大学部
雑誌
京都大学医療技術短期大学部紀要 = Annual reports of the College of Medical Technology, Kyoto University (ISSN:02867850)
巻号頁・発行日
no.4, pp.8-14, 1984
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine gross anatomy of the suprascapular nerve using 20 cadavers (14 male and 6 female), with special reference to the anomalous branch to the supraspinatus muscle and funicular pattern in the scapular notch. The branch to the supraspinatus muscle did not ramify proximal to the scapular notch, whereas the suprascapular artery passed under the superior transverse scapular ligament in 17.5% of the cadavers. Fourty percent of the scapular notches were type II by the classification of Rengachary. There was no adhesion between the suprascapular nerve and superior transverse scapular ligament which varied in size and toughness; the inferior transverse scapular ligament was, however, thin in 72.5%. Pseudoneuromas found just proximal to the superior transverse scapular ligament had no correlation with supraspinatus and infraspinatus muscle atrophy, which were not remarkable. The branch to the supraspinatus muscle superomedial in the scapular notch were located just below the superior transverse scapular ligament where friction neuritis was said to be occasionally seen. The present findings suggest that infraspinatus muscle atrophy is caused by suprascapular entrapment neuropathy at the spinoglenoid notch rather than at the scapular notch.
著者
藤野 英己 祢屋 俊昭 武田 功
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.218-224, 1997
参考文献数
10
被引用文献数
3

嚥下第2相では,呼吸運動と特に密接な関係が必要であると考えられている。そこでフォーストランスジューサおよび呼吸ピックアップセンサーを用いて,喉頭運動曲線,呼吸曲線を記録し,嚥下と呼吸の相互連関について検討した。嚥下時には安静呼吸に比較して,小さな呼吸が喉頭挙上に同期して生じた。この呼吸と喉頭運動の時間的相互連関を明らかにすることによって,正常嚥下の生理学的反応を推定した。その結果,喉頭挙上の開始直後に嚥下呼吸が発生し,喉頭が降下開始後に嚥下呼吸は呼息相に移行した。これは喉頭が挙上した後に嚥下呼吸の吸息が生じることによって気道内圧が下降し,気道閉鎖を完全な状態とすることを意味すると推測された。また,"むせ"の状態では嚥下呼吸が喉頭挙上に先行した。さらに,姿勢による影響について背臥位(頸中間位,頸前屈位,頸後屈位)で測定し,比較検討した。一方,この測定方法が嚥下の定量的評価として有用かについても考察を加えた。
著者
中野 哲 熊田 卓 北村 公男 綿引 元 武田 功 井本 正己 小沢 洋
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1306-1314, 1979-06-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
23
被引用文献数
3

健常者35例,肝硬変症を含む良性消化器疾患79例,肝癌を含む悪性消化器疾患84例の合計198例に,「第一」SPAC ferritin kitを用いて血清ferritinを測定し,その診断的意義を検討した.肝硬変症で43%,肝炎で50%前後,原発性肝癌で74%,転移性肝癌で67%に血清ferritinの異常高値がみられた.肝疾患において血清ferritinとGOT,血清Feとの対比を行つたが肝炎時にGOTと著明な相関がみられた(p<0.01)のみである.原発性肝癌では血清ferritinは,AFPが104ng/ml以上の場合は正の相関(P<0.05)それ以下の場合は負の相関傾向(0.05<P<0.1)がみられた.また巨大な腫瘍では微小な腫瘍より明らかに血清ferritinは高値を示した(P<0.05).一方,肝悪性腫瘍の血清ferritinとCEAは明らかな相関はみられなかつた.
著者
松永 秀俊 上田 周平 藤縄 理 安田 大典 武田 功
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101290-48101290, 2013

【はじめに、目的】多くの養成校においてアドミッションズ・オフィス(以下AO)入試が採用されている。AO入試は学生の個性や学ぶ意欲をアピール出来る反面、成績の低下が心配されている。また、進級が出来ない学生の中にAO入試での入学者の割合が多く占める様になり懸念されるところであるが、AO入学に関する論文は散見する程度であり、今後、入試形態を考慮する材料になることを期待し、今回、調査を行った。【方法】対象は平成21年4月に理学療法学科に入学した学生51名(男性31名,女性20名)(平均年齢18.1±0.4歳)とした。ただし、不安検査のみは正確性を高める目的で信頼性に問題のある無応答が10個以上ある者と妥当性に疑いのある嘘構点が11点以上の者の計2名は除外した。その結果、不安検査は対象者49名(男性30名,女性19名)(平均年齢18.1±0.4歳)を対象とした。 方法は対象者全員に対し、入学式後、前期講義開始前に行われたオリエンテーション終了後にManifest Anxiety Scale(以下MAS)を用いた不安検査とアンケートを行った。アンケートの内容は大学入学試験での初回受験日、年齢、性別、実家またはアパート・下宿等・その他からの通学かを尋ね、さらに実家と大学間の距離を確認するために実家に最も近い駅名(JR,私鉄,地下鉄)を所在県名とともに記載させた。さらに、入学後4年目に最終学年への進級が出来たか、または、進路変更・休学・留年等で出来なかったかを調査した。これらを基にAO入試での入学学生(以下、AO群)とそれ以外での入学学生(以下、一般群)間での比較・検討を行った。 統計処理は性別・通学方法・進級の可否の比較にはカイ二乗検定、年齢・実家からの距離にはマンホイットニーの検定、MASの比較には対応のないT検定を用い、危険率5%未満を有意確立とした。【倫理的配慮、説明と同意】調査に当たっては対象者全員に口頭でその主旨を伝え,協力の意志の有無を確認した。【結果】AO群は男性7名、女性3名、実家から通学している者6名、アパート・下宿等から通学している者4名、実家からの距離57.6±64.0km、年齢18.0±0.0歳、進路変更等なし4名、進路変更等あり6名、MASの点数18.6±5.3であった。AO群にはMASの不適格者がいなかったため、MAS対象者も全て同数であった。一般群は男性24名(MASの対象者は23名)、女性17名(MASの対象者は16名)、実家から通学している者22名(MASの対象者は20名)、アパート・下宿等から通学している者19名(MASの対象者は19名)、実家からの距離121.8±145.2km(MASの対象者は125.8±147.8km)、年齢18.1±0.4歳(MASの対象者は18.2±0.4歳)、進路変更等なし30名(MASの対象者は28名)、進路変更等あり11名(MASの対象者は11名)、MASの点数20.8±7.8であった。一般群にはMASの不適格者2名がいたため、MAS対象者の数値を別に記載した。これらの数値をAO群と一般群間で統計処理した結果、全てに有意差は無かった。【考察】岡本らはAO入学学生のメンタルヘルス問題の実態を把握し、支援の方法を検討した結果、AO入学学生のメンタルヘルス問題に関して、学生担当教員等の助言などのプライマリケアが必要であると同時に、早期からのサポート体制を検討していくことが重要であると述べている。また、八木らは入学者選抜におけるAO方式の有用性を検討した結果、AO方式による選抜が良好な結果をもたらしていることが検証されたと述べている。この様にAO入試による入学者に対する報告には様々な意見があり、その特徴について統一見解を得るための調査・検討は重要であると思われる。ただ、今回の結果から有意差が認められなかったことからAO群の特徴は見出せず、AO群と一般群には差はないと言う結果であった。しかし、対象者数を増やすことで有意差が得られる可能性があるものが認められたため、今後、さらに研究を続ける必要性を感じている。【理学療法学研究としての意義】AO入試を採用している理学療法の養成校は多い。しかし、AO入試は近年導入されたもので、その影響について論じられたものはほとんど無い。今後、入試形態の違いによる学生の特徴を把握し、それを理解した上での学生への対応が必要と考え、研究の継続の必要性を感じている。
著者
近藤 哲 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 堀 明洋 広瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕 中野 哲 武田 功 小沢 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.1987-1995, 1984-11-01
被引用文献数
23

原発性十二指腸癌7切除例を対象として臨床的検討を行った. 5例は UGI, 内視鏡, 生検の3者で診断可能であったが, 2例は膵癌の十二指腸浸潤との鑑別が困難であった. しかし US と CT で膵癌を否定しえた. 血管造影では4例中2例が十二指腸原発と確認しえた. さらに切除可能性, 根治性を推定するのに有用であった. リンパ節転移は全例に認められ, 非治癒切除4例中3例の非治癒因子, 治癒切除後再発2例中1例の再発因子となっていたした. したがって, 乳頭上部癌では膵頭部癌第1群リンパ節郭清をともなう膵頭十二指腸切除を原則とし, 乳頭下部癌では腸間膜根部リンパ節をより徹底郭清し状況によっては血管合併切除再建が必要と思われた.