著者
木元 克典 佐々木 理 鹿納 晴尚 岩下 智洋 入野 智久 多田 隆治
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.90-90, 2010

海水中のライソクライン(Lysocline)や炭酸塩補償深度(CCD)は地質時代を通して深度方向に数キロメートルの範囲で変動してきたことが海底堆積物の研究から明らかにされている。炭酸塩の海底での溶解は、巨視的な観点では深層水の化学的性質、すなわち炭酸塩に対する不飽和度(Ω = [Ca2+][CO32-]/K'sp)によって決まる。過去数十万年間における海水中の炭酸イオン濃度の復元は従来、炭酸塩骨格の保存の良否、炭酸塩含有量の測定や、生物起源粒子の重量比などの方法で見積もることが検討されてきた。しかし、いずれの方法も相対的および半定量的な検討にとどまり、いまだ溶解量の定量化は達成できていない。深海における炭素リザバーとしての重要性は認識されつつも、炭酸塩溶解量についての実質的な研究の進展はほとんど無いため、あらたな指標の開発が求められている。 本研究では、定量的な炭酸塩溶解指標を確立するため、海底に沈積した1つ1つの有孔虫骨格の内部構造に記録されている溶解の履歴に着目する。石灰質有孔虫の骨格断面は、炭酸カルシウムが層状に幾層にも積層されたラメラ(lamellar)構造をなす。骨格が炭酸塩に未飽和な海水にさらされると、骨格中の微量元素の不均質分布のため、溶解しやすい部分から先に溶解し、結果として骨格断面中に構造的欠損(空隙)が発生する。この空隙が増えるか、または大きくなることにより、最終的に脆く崩れ易くなると考えられる。この空隙の数または体積は、炭酸塩溶解量に比例することが予想できるため、この有孔虫"骨密度"を定量化することができれば、炭酸塩飽和度(Ω)に対する溶解量をこれまでになく詳細に、かつ定量的に求めることができる可能性がある。 我々は、このような作業仮説をもとに、マイクロフォーカスX線CTスキャナー(以下MXCT)を用いた有孔虫骨格の3次元構造解析を行い、そのX線透過率から有孔虫骨格の密度を求めるという新たな手法を提案する。MXCTによって再構成された堆積物中の有孔虫骨格には目視や電子顕微鏡観察からでは分からない、内部に存在する明らかな空隙をみてとることができ、堆積後の溶解による可能性が指摘できる。講演では、現生の浮遊性有孔虫や実験室で溶解させた有孔虫骨格のMXCT画像と、その密度変化について議論する。

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こんな論文どうですか? マイクロX線CT技術による有孔虫骨格破片を用いた海底堆積物中の炭酸塩溶解定量法の開発(木元 克典ほか),2010 https://t.co/EoY2lf5tDD
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こんな論文どうですか? マイクロX線CT技術による有孔虫骨格破片を用いた海底堆積物中の炭酸塩溶解定量法の開発(木元 克典ほか),2010 https://t.co/EoY2lf5tDD

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