著者
多田 隆治
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.218-233, 1998-04-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
57
被引用文献数
1 1

Since the ice core records from central Greenland revealed the presence and significance of millennial-scale large and abrupt climatic changes, widely known as Dansgaard-Oeschger [D-O] Cycles, it becomes the major objective of paleoclimatological researches to clarify their extent, nature, propagation mechanism, and driving force. Although the ultimate driving force is not yet understood, results of recent studies suggest 1) D-O Cycles are global phenomena, 2) they involve complicated interactions and feedback processes among the subsystems including atmosphere, cryosphere, hydrosphere, and biosphere, and 3) they seem tohave initiated from changes in atmospheric circulation.Catastrophic surges of Laurentide Ice Sheet called Heinrich Events are closely associated with D-O Cycles. Although Heinrich Events are likely to have been caused by free oscillationsof ice sheet growth and decay, they were probably not a cause of D-O Cycles but the events seem to have been phase-locked by D-O Cycles. Results of numerical modelling suggest the presence of multi-modes for global deepwater circulation. Switching among the modes is most likely caused by slight variation in hydrogical cycles which change the fresh water balance between Atlantic and Pacific.
著者
松井 裕之 多田 隆治 大場 忠道
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.221-233, 1998-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
50
被引用文献数
49 53

最終氷期極相期における日本海低塩分化事件を定量的に説明し,陸橋成立の可能性を議論するために,浮遊性有孔虫殻酸素同位体比から日本海表層水古塩分変化を復元した.そして,復元した古塩分変動を定量的に説明するために,塩分収支モデルを用いて日本海へ流入する海水量の時代変化を計算し,それをもとに海峡水深の時代変化を推定した.その結果,LGMにおける対馬海峡の海峡水深は2~9mと見積もられたが,この値は海峡内の海底地形から直接的に推定された値10~30mよりやや浅い.海底地形に基づく海峡水深推定値と調和的な解を求めるためには,古塩分見積値を誤差範囲内で大きめにした上で,対馬海峡における流速を現在の半分まで弱める必要があり,この場合,LGMの推定海峡水深は~10mと求まった.また,最終氷期極相期における海水流入量は500km3/y以下と推定される.このようなわずかな海水流入量は,津軽海峡での潮汐流による海水交換でも説明できることから,最終氷期極相期に対馬海峡が漂砂により埋積した場合,ごく短期間陸橋が成立した可能性を否定できない.
著者
木元 克典 佐々木 理 鹿納 晴尚 岩下 智洋 入野 智久 多田 隆治
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.90-90, 2010

海水中のライソクライン(Lysocline)や炭酸塩補償深度(CCD)は地質時代を通して深度方向に数キロメートルの範囲で変動してきたことが海底堆積物の研究から明らかにされている。炭酸塩の海底での溶解は、巨視的な観点では深層水の化学的性質、すなわち炭酸塩に対する不飽和度(Ω = [Ca2+][CO32-]/K'sp)によって決まる。過去数十万年間における海水中の炭酸イオン濃度の復元は従来、炭酸塩骨格の保存の良否、炭酸塩含有量の測定や、生物起源粒子の重量比などの方法で見積もることが検討されてきた。しかし、いずれの方法も相対的および半定量的な検討にとどまり、いまだ溶解量の定量化は達成できていない。深海における炭素リザバーとしての重要性は認識されつつも、炭酸塩溶解量についての実質的な研究の進展はほとんど無いため、あらたな指標の開発が求められている。 本研究では、定量的な炭酸塩溶解指標を確立するため、海底に沈積した1つ1つの有孔虫骨格の内部構造に記録されている溶解の履歴に着目する。石灰質有孔虫の骨格断面は、炭酸カルシウムが層状に幾層にも積層されたラメラ(lamellar)構造をなす。骨格が炭酸塩に未飽和な海水にさらされると、骨格中の微量元素の不均質分布のため、溶解しやすい部分から先に溶解し、結果として骨格断面中に構造的欠損(空隙)が発生する。この空隙が増えるか、または大きくなることにより、最終的に脆く崩れ易くなると考えられる。この空隙の数または体積は、炭酸塩溶解量に比例することが予想できるため、この有孔虫"骨密度"を定量化することができれば、炭酸塩飽和度(Ω)に対する溶解量をこれまでになく詳細に、かつ定量的に求めることができる可能性がある。 我々は、このような作業仮説をもとに、マイクロフォーカスX線CTスキャナー(以下MXCT)を用いた有孔虫骨格の3次元構造解析を行い、そのX線透過率から有孔虫骨格の密度を求めるという新たな手法を提案する。MXCTによって再構成された堆積物中の有孔虫骨格には目視や電子顕微鏡観察からでは分からない、内部に存在する明らかな空隙をみてとることができ、堆積後の溶解による可能性が指摘できる。講演では、現生の浮遊性有孔虫や実験室で溶解させた有孔虫骨格のMXCT画像と、その密度変化について議論する。
著者
松本 淳 多田 隆治 茅根 創 春山 成子 小口 高 横山 祐典 阿部 彩子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,アジアモンスーン地域における過去の気候資料と,日本のさまざまな緯度帯から取得される地質試料(サンゴ年輪やボーリングコア等)の解析によって,過去数10年〜数千年の時間スケールでアジアモンスーン域の降水量変動および各流域洪水の洪水史をまとめ,モンスーンにともなう降水量変動と洪水の歴史の関係を長期的に復元し,地表環境の変化との関係を考察することを目的として研究を行なった。千年規模での変動として,日本海南部隠岐堆の海底コア三重県雲出川流域のボーリングコアを解析した。後氷期には約1700,4200,6200年前に揚子江流域で夏季モンスーン性降雨が強まり,雲出川流域において約6000年前には堆積速度が大変に速く,この時代には広域的に洪水が頻発していた可能性が判明した。また,琉球列島南端の石垣島で採集されたサンゴ年輪コアの酸素同位体比と蛍光強度の分析によって,過去の塩分変動を定量的に復元できることがわかった。20世紀後半の変動としては,近年洪水が頻発するバングラデシュにおいて,GISとリモートセンシングデータによってブラマプトラ川の河道変遷と洪水との関係を検討し,河道が約10年周期で河川の平衡状態への接近と乖離とを繰り返したことがわかった。また大洪水が雨季には稲作に大きな被害をもたらすものの,引き続く乾季には大幅な収量増加がみられることを見出した。流入河川上流域のネパールでの降水特性を検討し,ネパールで豪雨が頻発した年とバングラデシュにおける洪水年とが対応していないことがわかった。さらに日本においては,冬の終了や梅雨入り・梅雨明けが近年遅くなっていることを明らかにした。気候変動研究に多用されているNCEP/NCARの長期再解析データには,中国大陸上で観測記録と一致しない変動がみられることを見出し,アジアモンスーンの長期変動解析にこのデータを使用するのは不適切であることを示した。
著者
多田 隆治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.668-678, 2005-11-15
参考文献数
69
被引用文献数
2 2

ヒマラヤ-チベットの隆起がアジア・モンスーンを強化したとする考えは古くから存在したが,それらの開始時期や様式について十分な知見が得られていなかったため,検証されずに今日に至っている.近年,中国のレス堆積物や日本海堆積物を用いたモンスーン進化過程の復元が進み,ヒマラヤ-チベットの隆起時期や過程についても知見が蓄積されてきた.ヒマラヤ-チベットの隆起とモンスーンの成立,進化の関係の吟味に不可欠な気候モデルも,飛躍的に改善が進んだ.本総説では,アジア・モンスーンの開始,進化,変動に関する最新の古気候学的知見を基にその進化過程を復元し,気候モデルを基に推定された進化過程と比較して,ヒマラヤ-チベットがどのように隆起してきたと考えれば,モンスーン進化過程が最もうまく説明がつくかを検討した.こうして推定されたヒマラヤ-チベットの隆起過程は,構造地質学的に推定された隆起過程と概ね整合的と考えられる.<br>
著者
多田 隆治 SUN Youbin
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

中国内陸乾燥域から飛来する風成塵は、北半球の気候や北太平洋域の生物生産に大きく影響している。こうした影響を評価する上で、風成塵の発生,運搬、堆積過程を知る事は重要であり、そのためには風成塵の供給源を知る必要がある。そこで、風成塵の鉱物・化学組成を利用し供給源を推定する試みが行われてきたが、未だに有効な手段は確立されていない。我々は、その原因が、鉱物・化学組成の粒度依存性や、風化・変質の影響が十分考慮されていない事にあると考え、風成塵の主要構成鉱物であり、風化・変質にも強い石英に的を絞り、その形成年代、晶出温度/速度という2つの指標で特徴づける事を考えた。石英の電子スピン共鳴(ESR)信号強度は母岩の形成年代を反映し、結晶化度(CI)は晶出温度や速度を反映する。そこでまず、中国、モンゴルの9砂漠について表層試料を採集し、5つの粒度区分に分画して、各粒度区分中の石英のESR信号強度とCIを測定した。その結果、16μm以下、32-64μ、64μm以上の3つの粒度区分が、それぞれ異なるESR信号強度とCIで特徴付けられ、異なる運搬様式に対応する事がわかった。特に16μm以下は、風による高高度運搬によると考えられた。そこで、9砂漠から採取された37試料について、特に、16μm以下の石英についてESR信号強度とCIを測定し、ESR信号強度対CI図上にプロットした結果、9砂漠全てが図上の異なる領域にプロットされ、明確に識別出来る事が明らかになった。全データは、タクラマカン、テンガー、グルバンチュンギュット、ゴビ(モンゴル)の4砂漠に対応する領域を結んだ4角形の中にプロットされるが、これら4砂漠はそれぞれクンルン、キリアン、アラタウ、アルタイ山脈の麓に位置し、それら山脈から供給された土砂を起源とすると考えられる。それに対し、他の5砂漠は、これら4砂漠起源の砕屑粒子の混合で説明出来る。
著者
田近 英一 多田 隆治 橘 省吾 関根 康人 鈴木 捷彦 後藤 和久 永原 裕子 大河内 直彦 関根 康人 後藤 和久 大河内 直彦 鈴木 勝彦 浜野 洋三 永原 裕子 磯崎 行雄 村上 隆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

約25億~20億年前に生じた全球凍結イベントと酸素濃度上昇の関係を明らかにするため,カナダ,米国,フィンランドにおいて地質調査及び岩石試料採取を実施し,様々な化学分析を行った.その結果,同時代の地層対比の可能性が示された.またいずれの地域においても氷河性堆積物直上に炭素同位体比の負異常がみられることを発見した.このことから,氷河期直後にメタンハイドレートの大規模分解→温暖化→大陸風化→光合成細菌の爆発的繁殖→酸素濃度の上昇,という可能性が示唆される.