著者
折橋 裕二 新正 裕尚 ナランホ ホセ 元木 昭寿 安間 了
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.157, 2010

南米大陸西縁に発達するチリ・トレンチには約15Ma以降,断続的にチリ中央海嶺が沈み込んでおり,現在,タイタオ半島沖の南緯46°付近にはT-T-R三重点を形成している.したがって, SVZの最南端のハドソン火山からアンデス弧沿いの南緯34°まで発達するSVZ火山列の化学組成の側方変化を把握することで,定常的な沈み込み帯から中央海嶺沈み込みの開始に至るマントルウェッジ内の温度構造,スラブから脱水作用とマントルウェッジ内に循環するH2Oの変化を把握することができる.本講演ではSVZ全域の第四紀火山から採取した玄武岩質岩について,主・微量成分(ホウ素濃度を含む)を測定し,この結果から最南端のハドソン火山から最北端のサンホセ火山(南緯34°)に至るSVZ火山の化学組成の側方変化を 議論する.
著者
平尾 良光
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

1533年に灰吹き法という鉛を用いる銀製錬法が導入され、また1543年に火縄銃という武器がもたらされた。この2つの事実に共通する材料は鉛である。そこで、戦国時代に利用された鉛の産地を明らかにするために、発掘資料の中から、一般資料(分銅、キセル、簪など)やキリスト教用品、各地の戦跡から鉛玉などを得て、鉛同位体比を測定した。その結果、少なくともその40%は中国や東南アジア産などの外国産鉛であった。タイにおける現地調査で東南アジア産の鉛はタイ国カンチャナブリ県のソントー鉱山産(バンコクから北西約250km)であることが判明した。佐渡金銀鉱山や石見銀鉱山で利用された鉛は日本産材料であり、利用されたそれぞれの鉛鉱山が判ってきた。鉄砲玉と銀製錬に利用された鉛の産地が系統的に異なっていることは日本史の中で何を示唆しているのであろうか。
著者
本多 照幸 小野 剛 塚本 篤 松野 弘貴
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.139-139, 2011

本研究では、東京近郊の川崎市郊外(西部)を中心とした事故後の大気及び土壌試料におけるγ線核種(131I、134Cs、137Cs、95Nb、129Te等)の解析結果について報告する。大気試料は粒子状物質(APM)と降下物であり、何れも都市大原研(川崎市西部)で採取した。土壌試料は、同研究所のほか多摩川河川敷等で深度方向に採取し、U8容器に充填した。γ線の測定にはGe半導体検出器を用い、10000~80000秒測定した。
著者
関 有沙 横山 祐典 鈴木 淳 川久保 友太 菅 浩伸 宮入 陽介 岡井 貴司 松崎 浩之 浪崎 直子
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

完新世の短期的な気候変動のメカニズムを明らかにする上で、古気候復元データの不足は深刻な問題である。本研究では、完新世の寒冷化イベントの古気候データが不足している東シナ海に位置する沖縄県久米島の化石サンゴ骨格のSr/Ca比と放射性炭素年代の分析を行い、完新世中期の表層海水温の復元を行った。その結果、PME(Pulleniatina Minimum Event)と呼ばれる寒冷化イベントにおいて、夏と冬の水温低下幅が異なることが明らかになった。今後、本手法でPMEの際の表層海水温復元をより多くの年代で行うことによりPMEの古水温変動を時系列で復元し、寒冷化メカニズムの解明に寄与することが期待される。発表では、新たに採取した化石サンゴの放射性炭素年代測定の結果を示し、その年代分布から、今後の研究の展望についても紹介する。
著者
阿部 なつ江 金松 敏也 末次 大輔 山崎 俊嗣 岩森 光 安間 了 平野 直人 折橋 裕二 原田 尚美 富士原 敏也
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.189-189, 2010

海洋研究開発機構・海洋研究船「みらい」によるMR08-06航海(通称:SORA 2009: South Pacific Ocean Research Activity 2009)は、南太平洋および沈み込み帯における地質学・地球物理学的研究ならびにチリ沖における古海洋環境変動復元研究を行う事を目的とし、平成21年1月15日(木)関根浜出港 ~ 平成21年4月8日(水)バルパライソ入港までの計84日間、3レグに渡り実施され,レグ1は、1月15日関根浜出港~3月14日バルパライソ入港までの59日間実施された。そのレグ1における航海実施概要と,太平洋横断中の海底地形・重力の測定結果を発表する。
著者
角野 浩史 ウォリス サイモン 纐纈 佑衣 遠藤 俊祐 水上 知行 吉田 健太 小林 真大 平島 崇男 バージェス レイ バレンティン クリス
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>四国中央部・三波川変成帯に産する変泥質岩、エクロジャイト、蛇紋岩、かんらん岩のハロゲン・希ガス組成は一様に、深海底堆積物中の間隙水と非常によく似た組成を示す。同様の組成は島弧火山岩中のマントルかんらん岩捕獲岩や深海底蛇紋岩でも見られることから、沈み込み前に屈曲したプレートの断層沿いにプレート深部に侵入した間隙水がスラブマントルを蛇紋岩化する際に、ハロゲンと希ガスが組成を保ったまま蛇紋岩に捕獲されて沈み込み、水とともにウェッジマントルへと放出されている過程が示唆される。</p>
著者
野坂 裕一 鈴木 光次 山下 洋平 齋藤 宏明 高橋 一生
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.273-273, 2011

2010年4月および6月の親潮域において,植物プランクトンの群集組成と光合成特性と共に,透明細胞外重合体粒子(TEP)分布の特徴を調査した.4月は珪藻ブルームが発生し,表層(5m深)における植物プランクトンの光合成活性が相対的に高かったのに対し,6月は珪藻ブルームが終焉し,光合成活性も低かった.4月における表層のTEP濃度は,6月と比較して,2-3倍高かった.観測期間中,表層のTEP濃度とSi(OH)4/NO3比の間に高い相関(r = 0.94, p < 0.01, n = 6)がみられたことから,珪藻類の栄養塩取り込み活性がTEP生産を支配していたことが示唆された.
著者
板井 啓明 兵部 唯香 田辺 信介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

琵琶湖の湖底表層には、マンガン濃集層が広く存在することが知られている。このマンガンは主に酸化物態で存在することから、近年の琵琶湖の貧酸素化により還元反応が進行し、湖水へ大量溶出することが懸念されている。本研究では、琵琶湖北湖盆7地点で採取したコア堆積物と間隙水の化学組成を基に、今後貧酸素化が進行した際のマンガンの形態変化および固-液分配変化を仮定し、拡散モデルを用いて底泥からの溶出フラックスの変化を推定した。その結果、貧酸素化にともなう溶出挙動変化は地点間で異なるものの、底泥からの溶出フラックスとして最大で現在の20倍程度に増加ことが推察された。
著者
中村 俊夫 緒方 良至 箕輪 はるか 佐藤 志彦 渡邊 隆広
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原発事故により大量の放射性物質が環境中に放出された.大気粉塵,土壌,植物などの放射能分析から大気中に放出された核種とおおよその量が見積もられている.一方,地質学・考古学試料について約5万年までの高精度年代測定に利用されている放射性炭素(14C;半減期:5730年)の放出に関しては,その放出の形態や数量はきちんと確認されてはいない. 事故のあった福島第一原発付近への立入は制限されており,採取できる試料には限りがあるが,2012年に,福島第一原発から南に20~30km離れた広野町の海岸付近で海産物などを採取した.また,2011年秋には,福島第一原発から北西に約60km離れた福島大学金谷川キャンパスにおいて植物を採取し,それらの14C濃度を測定した.測定結果からは福島第一原発事故の影響は検出されなかった.
著者
城谷 勇陛 御園生 淳 渡部 輝久 宮本 霧子 高田 兵衛
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>核燃料サイクル施設周辺海域における1991年以降の海水および2001–2011年の海産生物の<sup>3</sup>H濃度について2006年からのアクティブ試験や2011年に起きた福島第一原発事故による影響について明らかにすることを目的とし、<sup>3</sup>H分析を行った。アクティブ試験の影響による<sup>3</sup>H濃度の上昇が、海水については2007、2008年に、海産生物では2006、2007,2008年に確認された。一方で、福島第一原発事故の影響による<sup>3</sup>H濃度の上昇は両方で確認されなかった。</p>
著者
杉山 裕子 Hatcher Patrick 熊谷 哲 Valentin Drucker Vladimir Fialkov 片野 俊也 三田村 緒佐武 中野 伸一 杉山 雅人
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.190-190, 2008

バイカル湖深層水中の陸起源有機物の存在を分子レベルで明らかにすることを目的として、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析器による分析を行った。分析の結果、バイカル最深部945mの試料水で検出された質量ピークの89.6%は流入河川水中で検出されたピークと全く同じ分子式で示される物質であることが明らかになった。
著者
南 雅代 中村 俊夫
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.325-325, 2008

これまで、鎌倉由比ヶ浜地域の遺跡から出土する大量の中世人骨は、数千人におよぶ死者を出したと考えられている新田義貞の鎌倉攻めの合戦(1333年)によって死没した人々のものと推察されてきた。我々はこれまでに、由比ヶ浜南遺跡、中世集団墓地遺跡から出土した人骨の放射性炭素(14C)年代を測定し、いずれの人骨試料も鎌倉幕府終焉より古い14C年代を示す傾向が見られることを報告した。しかし、埋葬されている人達は海産物を食しており、14Cの海洋リザーバー効果により、得られた骨の14C年代が実際の年代より古い可能性が考えられた。そこで、本研究では、モンテカルロ法を用いた海産物の摂取割合算出プログラムによりδ13C値、δ15N値からMarine%を算出し、Marine04/IntCal04データセットによるMarine混合曲線によって較正年代を求め、さらに確かな年代を算出する試みを行った。
著者
坂田 霞 薮田 ひかる 池原 実 近藤 忠
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

地球誕生後まもなく形成し今日に至り広く分布する海洋地殻は,地球最古の生態系が存在する環境として着目されていると同時に,初期地球,また地球外惑星における生命存在可能性についての示唆を与える(Edwards et al. 2012).海洋地殻では,海底下を循環する海水と岩石との反応で溶出した様々な元素を栄養源とする微生物が存在すると考えられ(Edwards et al. 2005),そのような岩石-水プロセスが観察できる,貧栄養,低温(10-15℃),速い海水循環が特徴的な北大西洋中央海嶺西翼部North Pondでの地下生命圏探査を行った。本研究では,玄武岩掘削試料中の微生物活動の記録を明らかにする目的で有機物の検出と炭素同位体分析を試みた。
著者
黒田 潤一郎 谷水 雅治 堀 利栄 鈴木 勝彦 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.398-398, 2008

白亜紀のAptianからTuronianにかけて、海洋底に有機質泥が堆積する海洋無酸素イベントOceanic Anoxic Event (OAE)が繰り返し発生した。その中でも、前期AptianにおきたOAE-1aは汎世界的に有機質泥が堆積する最大級のOAEである。このOAE-1aの年代(約120 Ma)は地球最大の洪水玄武岩であるオントンジャワ海台の形成時期(123~119Ma)に近く、このため両者の関連が注目されてきた。オントンジャワ海台の火山活動とOAE-1aの関連を調べることで、大規模な火成活動と地球表層環境変動とのリンクを理解することができる。しかし、両者の時間的関連や因果関係について未解明の問題が多く、前者については年代学的・層序学的精査が、また後者については数値モデル実験などを用いた検討が必要である。本研究では、Aptian前期にテチス海や太平洋で堆積した遠洋性堆積物の炭素、鉛、オスミウム同位体比を測定し、OAE-1aの層準の周辺でオントンジャワ海台の形成に関連した大規模火山活動の痕跡が認められるかどうかを検討し、両者の同時性を層序学的に評価した。用いた試料はテチス海西部の遠洋性堆積物(イタリア中部ウンブリア州)、太平洋中央部の浅海遠洋性堆積物(シャツキー海台のODP198-1207Bコア)および深海遠洋性堆積物(高知県横波半島の四万十帯チャート;庵谷ほか、印刷中)の3サイトの遠洋性堆積物を使用した。これら3サイトにおいて、微化石および炭素同位体比変曲線からOAE-1aの層準を正確に見出した。横波半島の四万十帯チャートは、OAE-1aのインターバルを含む数少ない太平洋の深海底堆積物である(庵谷ほか、印刷中)。イタリアセクションのOs同位体比はOAE-1aの開始時およびその数10万年前の2回、明瞭なシフトが認められ、同位体比の低いOsの供給が増加したことが明らかになっている(Tejada et al., submitted)。特にOAE-1aの開始時に起きたOs同位体比のシフトは極めて大きく、数10万年間続くことから、オントンジャワ海台の形成に関連したマントルからの物質供給でのみ説明可能である。今回、低いOs同位体比が横波チャートにも認められることが明らかになった。先に述べたOs同位体比の変動は地球規模のものと結論付けられる。一方、海洋での滞留時間の短いPbはOsと異なり、サイト間で同位体比が異なる。イタリアのセクションでは当時のユーラシア大陸地殻に近いPb同位体比を示し、同位体比の大きな変動は認められない。これに対し、横波チャートのPb同位体比はオントンジャワ海台玄武岩の同位体比にほぼ一致し、オントンジャワからの物質供給が活発であったことを示している。シャツキー海台の堆積物のPb同位体比はイタリアセクションと横波チャートの中間的な値を示す。また、シャツキー海台の堆積物には、OAEが開まる時期にオントンジャワ海台からの物質供給が増加したことを示唆するPb同位体比の変化が認められた。このように、Pb同位体組成には当時の古地理(オントンジャワ海台からの距離、深海/浅海)に対応した違いが認められた。本発表では上記の新知見に加えて、3サイトのPb同位体比と古地理分布からオントンジャワ海台からの物質供給プロセスなどを検討する。
著者
木元 克典 佐々木 理 鹿納 晴尚 岩下 智洋 入野 智久 多田 隆治
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.90-90, 2010

海水中のライソクライン(Lysocline)や炭酸塩補償深度(CCD)は地質時代を通して深度方向に数キロメートルの範囲で変動してきたことが海底堆積物の研究から明らかにされている。炭酸塩の海底での溶解は、巨視的な観点では深層水の化学的性質、すなわち炭酸塩に対する不飽和度(Ω = [Ca2+][CO32-]/K'sp)によって決まる。過去数十万年間における海水中の炭酸イオン濃度の復元は従来、炭酸塩骨格の保存の良否、炭酸塩含有量の測定や、生物起源粒子の重量比などの方法で見積もることが検討されてきた。しかし、いずれの方法も相対的および半定量的な検討にとどまり、いまだ溶解量の定量化は達成できていない。深海における炭素リザバーとしての重要性は認識されつつも、炭酸塩溶解量についての実質的な研究の進展はほとんど無いため、あらたな指標の開発が求められている。 本研究では、定量的な炭酸塩溶解指標を確立するため、海底に沈積した1つ1つの有孔虫骨格の内部構造に記録されている溶解の履歴に着目する。石灰質有孔虫の骨格断面は、炭酸カルシウムが層状に幾層にも積層されたラメラ(lamellar)構造をなす。骨格が炭酸塩に未飽和な海水にさらされると、骨格中の微量元素の不均質分布のため、溶解しやすい部分から先に溶解し、結果として骨格断面中に構造的欠損(空隙)が発生する。この空隙が増えるか、または大きくなることにより、最終的に脆く崩れ易くなると考えられる。この空隙の数または体積は、炭酸塩溶解量に比例することが予想できるため、この有孔虫"骨密度"を定量化することができれば、炭酸塩飽和度(Ω)に対する溶解量をこれまでになく詳細に、かつ定量的に求めることができる可能性がある。 我々は、このような作業仮説をもとに、マイクロフォーカスX線CTスキャナー(以下MXCT)を用いた有孔虫骨格の3次元構造解析を行い、そのX線透過率から有孔虫骨格の密度を求めるという新たな手法を提案する。MXCTによって再構成された堆積物中の有孔虫骨格には目視や電子顕微鏡観察からでは分からない、内部に存在する明らかな空隙をみてとることができ、堆積後の溶解による可能性が指摘できる。講演では、現生の浮遊性有孔虫や実験室で溶解させた有孔虫骨格のMXCT画像と、その密度変化について議論する。
著者
堀内 真愛 古川 善博 掛川 武
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.121-121, 2011

リボースの生成は初期生命の形成において重要である.初期地球におけるリボース生成反応としてホルモース反応が提案されているがこの反応にはリボース前駆体が不安定であるという問題がある.これに対しホウ酸塩を添加するとリボース-ホウ酸錯体が形成され,リボースの安定性が向上することが提案されている.従来の分析法では反応の素過程とそれらに対するホウ酸の影響が明らかにされていない.そこで本研究ではLC/MSによる分析手法開発、さらにホルモース反応において不安定な前駆体であるグリセルアルデヒドの縮重合実験を行い,ホウ酸の影響を検証した. 分析条件開発の結果,2つの配位子交換カラムが適していることが明らかになり,開発した条件で実験生成物を分析したところ,ホウ酸塩を反応に添加した場合,グリセルアルデヒド-ホウ酸錯体が形成し,グリセルアルデヒドの減少率が低下した.これらの結果は, ホウ酸がグリセルアルデヒド-ホウ酸錯体を形成することで,グリセルアルデヒドの安定性を向上させ,ホウ酸が初期地球におけるリボース生成に貢献したことを示唆する.
著者
高谷 雄太郎 中村 謙太郎 加藤 泰浩
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.15-15, 2010

CO2帯水層貯留の貯留サイトとして,地中の玄武岩層に注目が集まっている.玄武岩は反応性が高く,またCaやMg,Feといった,炭酸塩鉱物を形成しやすいアルカリ土類元素に富んだ組成を持つことから,CO2貯留の長期安全性を規定する地化学トラッピングが速やかに進行すると期待されるためだ.本研究では,玄武岩層内におけるCO2地化学トラッピングの進行速度やその特性を明らかにするため,貯留層を模した実験条件下でCO2‐水‐岩石反応を実施した.発表では,得られた実験データをもとに長期的な炭酸塩鉱物の形成モデルを提示し,さらにCO2の固定効率の推定を行う.
著者
本多 照幸 北原 照央 廣瀬 勝己 五十嵐 康人 青山 道夫
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.195-195, 2006

本研究では、1964年及び2000年福岡降下物試料(固形分)に中性子放射化分析やγ線スペクトロメトリ等を適用し、得られた定量結果を用いて、既報の近年における降下物試料の定量結果を含めて比較検討し、福岡降下物から見た大気環境の変動について考察した。その結果、1.1964年福岡における全降下量は、2000年に比べて数倍から十数倍多かったが、その原因は土壌ダストによるものであり、通年において土壌ダストが全降下量を支配し、2.ウランの起源は、土壌だけでなくフォールアウトも含むことが示唆された。また、3.REEパターンより、1964年試料では11月と12月が黄砂のパターンに近く、これらの月では黄砂の寄与が比較的大きく、さらに、4.Th/Sc比より、近年試料(特に2000年長崎と福岡)の方が1964年福岡試料より黄砂の寄与が大きいことが判明した。
著者
太田 充恒 鍵 裕之 津野 宏 野村 昌治 今井 登
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.313-313, 2009

土壌中の有機物や2価鉄などによって、有害な6価クロムが無害な3価クロムへ還元される反応は、環境化学的に重要である。演者らは、人工汚染土壌標準試料であるJSO-2(現在配布停止)中の6価クロムが、作成後5年以内に全て3価に還元されたことに着目し(Tsuno et al., 2006)、土壌中での有害元素の反応機構の解明に取り組んでいる。平成18年度の地球化学会年会(太田・津野・鍵・福良・野村・今井)では、状態分析法を用いて汚染土壌中のクロムの化学形態特定を行い、6価クロムが還元され3価の水酸化クロムとして存在していることを報告した。今回は、X線吸収端微細構造(EXAFS)解析を用いて詳細な構造解析を行うことで、その反応過程について新たに知見を得たので報告する。
著者
下島 公紀 前田 義明
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.271-271, 2011

海底熱水活動によって海洋に放出されるCO2の拡散挙動観測を実施した。水深1500mの海邸から浮上するCO2液滴は、浮上に伴って周辺海水に徐々に溶解するが、その溶解による低pH環境の影響範囲は比較的狭い。水深200mの海底から噴出・上昇する噴気中CO2は、周辺海水に徐々に溶解することで、海底近傍に低pH・高CO2水塊を形成するが、噴気中CO2は、海底上80m付近において最終的には完全に海水中に溶解し、噴気中からは消滅する。